日本ハム・吉田輝星が2軍降格 伸び悩む要因は-評論家の視点「腕の振りが緩む投手は打者にとってカモ」
日本ハム・吉田輝星投手が、8月31日のロッテ戦で1回2安打1失点。2戦連続の失点で防御率9・00となり、1日に出場選手登録を抹消された。
18年夏の甲子園で金足農のエースとして大フィーバーを巻き起こした吉田。ドラフト1位で日本ハムに入団したが、5年目の今季はここまでわずか3試合の登板のみ。昨季は51試合に登板したが、伸び悩んでいる印象は否めない。
31日の登板は1点ビハインドの八回。先頭の友杉に粘られた末、8球目の144キロ直球で二塁打を許した。その後、申告敬遠を挟んで2死一、三塁から和田には145キロの直球を打たれ、右前適時打で1点を献上した。この後、岡には四球。安田を二ゴロに抑えて1失点にとどめたが、制球にも不安を感じさせた。
29日のロッテ戦でも4点ビハインドの八回に登板し、先頭の岡に二塁打。1死三塁から山口にはカットボールを捉えられ、2ランを被弾した。
今夏ようやく1軍での登板チャンスをつかんだが、3試合の登板でアピールはできず。31日、新庄監督は「もう一回(2軍で)鍛え直してもらいます」と話した。
吉田の課題はどこにあるのか。試合後、新庄監督は「腕が振れていないというか、変化球で腕の振りが緩んで、見やすいですね。バッターが」と振り返った。
巨人OBで投手コーチの経験もあるデイリースポーツ評論家・関本四十四氏は「変化球で腕の振りが緩むというのは制球に自信がないから。1軍レベルの打者になれば、『腕の振りが緩む投手はカモですよ』と言うもんな。打席で、感覚的に分かるらしいから。プロのスカウトも、球種によって腕の振りが緩む投手は評価が下がる」と語った。
吉田は高校時代、伸びのあるストレートを武器に甲子園で決勝まで勝ち進んだ。今季初登板となった25日の西武戦でも11球のうち9球が直球で、2奪三振で三者凡退。ただ、この試合を含めて登板3試合で150キロ超は計測していない。
関本氏は「球速表示だけが全てではないが、真っすぐだけで抑えられるほどプロは甘くない。指にかかった真っすぐが外角に決まってもファウルされたら次どうするのか。7、8球もしたら打者は慣れてくる」と指摘。続けて、「吉田も分かってはいるだろうけど、まだ心のどこかに、かっこよくアウトを取ろうという思いがあるんじゃないか。巨人コーチ時代、監督の堀さん(元巨人・堀内恒夫氏)にも『かっこよくアウトを取らせようとするなよ』と言われたんだけど、投手にはどうしても空振り三振、見逃し三振を取りたいという意識があるもの。でも、プロではいかに詰まらせるか、タイミングを外すかを突き詰めていかないと。そこが吉田にはまだ足りないんじゃないか」と語った。
今後、吉田がレベルアップするにはどうしたらいいか。関本氏は「コーチがついて、ワンバウンドになってもいいから腕を振って変化球を投げ込む。3球真っすぐ投げたら3球変化球。真っすぐではない、相手に厄介だと思わせる変化球を身につけないと厳しい」という。さらに、自身のコーチ時代の経験も含めて、「巨人の西村健太朗なんかも武器にしたけど、本人に勇気があれば、シュート系は比較的習得しやすい。内角をついてゴロを打たせるような投球だよな。吉田も、そういう意識の方向転換をそろそろしていく時期にはきている」とした。
スター性は十分の右腕。今後の成長が期待される。(デイリースポーツ・佐藤啓)