【野球】阪神・岡田監督の激怒は当然か “看過できない死球”へ発した強いメッセージ 1人、ヤクルトベンチを見つめた指揮官の姿

 「東京ヤクルトスワローズ1-7阪神タイガース」(3日、神宮球場)

 阪神・岡田彰布監督が怒りをあらわにするのも無理はなかった。「情けないのう。2年連続優勝したチームやしのう」と切り出し、「状況を考えたらってお前、もう…。普通に考えたら分かるやないか」。指揮官が激怒したのは九回、近本への死球だ。

 試合は7点リードの展開。ヤクルト・山本の2球目は近本の右脇腹付近を直撃した。7月に死球を受けて離脱した際と「同じようなところみたいやけど」と明かした指揮官。近本は打席でうずくまり、慌ててトレーナーが駆け寄った。ベンチから岡田監督は心配そうに見つめると同時に、表情には明らかな怒りがにじんでいた。

 もちろんどんな点差であれ、インサイドを攻めてはいけないという文言は公認野球規則にはない。厳しい生存競争が繰り広げられるプロ野球界だけに、投手も必死だろう。好打者の近本を抑えるには内角球も必要と言える。

 だが8月のヤクルト戦で梅野が左手首付近に死球を受け、左尺骨の骨折で離脱。さらに今3連戦では危ないボールも何球かあった。MLBや国際大会のアンリトン・ルールではないが、一時代前のプロ野球には“勝負が決まった展開での死球は御法度”という不文律があったことも耳にする。それが破られれば“報復死球”という措置もあったと聞く。

 岡田監督からすれば九回裏を抑えるだけのゲーム。そんなイメージを一気に吹き飛ばすような近本の痛がり方だった。神宮球場は騒然となり、スタンドから怒号が飛び交った。選手たちが一丸となって長いシーズンを戦い、12球団トップの白星を積み重ねてきた。だからこそチームを率いる立場として、大量リードの九回に受けた“看過できない死球”に強いメッセージを発したのだろう。

 「あきれるよなぁ」

 「そういうチームなんやろ」

 もうこれ以上、死球禍を見過ごすことはできない。阪神はリーグ2位の46死球を受けており、選手たちの気持ちを考えれば、“報復死球”などではなく、き然とした態度でハッキリと不信感を示す。勝利のハイタッチを終えた岡田監督は1人、じっとヤクルトベンチを見つめていた。

 8月に横浜スタジアムでのDeNA戦で京田のブロックによる不可解判定が起こった際も、リクエストへの抗議は退場処分となる中、ベンチを飛び出して審判団に詰め寄った。その姿を選手たちはベンチで目に焼き付けるように凝視していたのも印象的だった。翌日は審判団と握手をしないなど強い姿勢を示した指揮官。チームに一体感を生むのは、65歳を迎えても先頭に立ち続ける背番号80の背中だ。

 優勝マジックを15へ減らし、2位・広島とは7・5ゲーム差が開いた。着々と18年ぶりのリーグ制覇へ歩みを進めているだけに、最も怖いのは「故障離脱」とも言える。近本は病院に行って診断を待つ形かの問いに「そらそやろ」と語った岡田監督。不安を払しょくできない中でも岡田阪神はきっと、一丸となって前へ、前へと進んでいく。(デイリースポーツ・重松健三)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス