【野球】阪神・近本を襲った死球に思う 中日・落合監督が語っていた予測力とは 執拗な内角攻めは強打者の宿命と言うが
阪神・近本光司外野手が3日のヤクルト戦の九回、左腕・山本から右脇腹に死球を受け、打席内でしばらくうずくまったまま微動だにせず、懸命に痛みに耐える姿があった。近本は7月2日の巨人戦で高梨から死球を受けて右肋骨を骨折して戦線離脱した過去があるだけに、スタンドからは怒号が飛び交い、球場は騒然とした空気になった。
阪神が大量7点をリードしていた試合展開だっただけに、岡田監督は「状況を考えたらってお前、もう。普通に考えたら分かるやないか」と制球ミスが死球につながったとはいえ、ヤクルトバッテリーの内角攻めは理解不能だった。
さらに8月13日の対戦では梅野が今野から左手首に死球を受けて左尺骨を骨折。2日の対戦では、小野寺と大山が2者連続で顔付近を通過した阪口の投球に体をのけぞらせて死球を回避していた中での死球に「そういうチームなんやろ。あきれるよなあ」と、リーグトップの58死球を記録しているチームを預かるヤクルト・高津監督への不快感を隠そうとはしなかった。
強打者に内角攻めは付き物と言われる。安打される確率が高いと思えば、相手バッテリーは打者の踏み込みを少しでも甘くさせ、打ち損じを誘発するために体に近い球を投げ込む。強打者の宿命、打ち取るための駆け引きではあるが、実際にぶつけてしまうと、話は変わってくるように思う。
中日監督時代の落合博満氏は「そりゃ相手も生活かかってんだから、必死こいて抑えにくるよ。打たれたら次の登板がなくなるかもしれないし、2軍に落とされるかもしれない。来年はユニホームを脱がなきゃいけなくなるかもしれないわけだから」と内角攻めに一定の理解を示していた。それでも「内角を厳しく攻めるのと、ぶつけるのは違うよ。そこはピッチャーの技術不足ということになってくる」と語っていた。
続けて「バッターは最初からインサイドに来ると予測しなきゃいけない。死球には避けられる死球、避けられない死球っていうのがあるけど、死球を避ける技術力ってのも必要。俺も結構ぶつけられたけど(63個)、うまくよけた、かわせたってのも多かったと思うで」とした上で、「一番効果的なのは、ピッチャーが打たせたくないと思って投げてきた内角球を打ち返してやることだよ」と語っていた。
死球は当てた側の責任で、当てられた側に落ち度はない。近本、梅野においても死球を回避するのは難しかったと思う。ただ、阪神は18年ぶりのリーグ優勝に突き進む途中であり、梅野に続いて主力選手が戦線離脱することは避けなければならない。投手はもちろん、監督や捕手を含む投げる側にはさらなる技術力の向上、モラル、マナーなどの徹底が求められ、投げ込まれる側も改めて、危機管理意識をより高める必要があるのかもしれない。(デイリースポーツ・鈴木健一)