【野球】なぜ阪神・岡田監督は大竹にバスターを命じたのか 「この作戦は読めん」「引き出し多すぎ」ファンは感嘆
「阪神タイガース5-1広島東洋カープ」(9日、甲子園球場)
阪神・岡田監督は大好きな将棋になぞらえるように手順を大事にする。自らの野球勘に従いつつも、セオリーに逆らって流れを手放す可能性のある采配をチョイスすることの少ない指揮官が、大方の予想を覆すタクトを振った。シーズン最終盤に飛び出した驚きの作戦に、阪神ファンも目を丸くした。
9日に甲子園球場で行われた2位・広島との一戦。佐藤輝とノイジーの連打で1点を先制した無死一塁から、打席に7番の坂本を迎えた場面で、岡田監督は迷うことなく送りバントを指示した。指揮官が嫌ったのは、1点を先制したことで押せ押せムードになり、強攻策を選択した結果、坂本か木浪が併殺打に倒れ、次のイニングが投手の大竹から始まる攻撃になることだった。
坂本がきっちり送って1死二塁。これで併殺の可能性がほぼ消えた。木浪が右前打。好機は広がって一、三塁。大竹はバントの構えをしていた。送って2死二、三塁の形を整えて近本に任せる。仮に追加点は奪えなくても、近本勝負で点が入らなければチームとして仕方ないと割り切れる。そんなイメージを抱いていた。
2球連続ボール。外角への3球目はストライクとなったが、バントの構えからバットを引いて見送った。4球目も送る構えを見せていたが、投球と同時にバスターに切り替えた。まさかの強攻策。しかも、外角直球を捉えた打球は左翼・西川の頭上を越える適時二塁打となり、続く近本の左前2点適時二塁打を呼び込み、一挙4得点のビッグイニングを形成した。
8月16日の広島戦に勝利して初めて優勝マジックが点灯して以降、手堅い野球を推し進めてきた印象が強い中、久々に相手を惑わす采配に出た。岡田監督は優勝への条件として、広島3連戦前に「絶対に3連敗だけせんように」と語っていたが、初戦を制して優勝マジックを10として目鼻をつけたことで、日本シリーズ進出をかけたCSでの広島との再戦をにらんだ作戦だったのかもしれないと思った。
岡田監督は試合後、「サイン分からへんかった。2回目のサインでやっと分かった。あのカウントで」と大竹が直前までベンチのサインを分かっていなかったことを明かした上で、「いやいや、狙いというか(併殺シフトだった内野が)前に来たから(サインを)変えたんや。それまではバントやったけど。ホントは2アウト二、三塁でな、近本でええと思うたからな。バントの構えで前来たから、バスターに変えたんや。バスターやったらゲッツーにならんやんか。守備隊形のおかげやろな、あのバスターはな」と笑いながら語った。相手のシフトチェンジに伴って犠打から強攻へ切り替えた判断とタイミング。それに応えた大竹も見事だったが、目には見えない阪神への流れを感じずにはいられなかった。
阪神ファンはSNS上で「この作戦は読めん」「こんなオモロイ野球あるんや」「岡田監督引き出し多いわ」「野球は奥が深い」「神采配やな」といったコメントで快勝を喜び、岡田監督の采配を絶賛した。
シーズン124試合目に見る者を驚かせた岡田マジック。4万2639人がスタンドを埋めた前売りチケット完売の甲子園が揺れた。今季4度目の7連勝で貯金は今季最多を更新する32。9月負けなしで優勝マジックは7となった。(デイリースポーツ・鈴木健一)