【野球】阪神はなぜ強かったのか?岡田監督が掲げた「流れの野球」打った併殺打&与四球はリーグ最少 ストレスのない野球に

 阪神が2005年以来、18年ぶりのリーグ制覇を果たした。2位に10ゲーム差以上をつけ、他球団に勝ち越しを決めての完全V。データをひもとくと「流れの野球」を標榜していた岡田監督らしい、ある数字が浮かび上がる。

 今季、リーグ最多と最少で相反した項目が2つある。一つ目は「併殺を奪った数」と「併殺打を打った数」だ。就任直後に中野の二塁コンバートを明言し、二遊間を守る選手の固定を実践。「相手が変わるとタイミングがかわる」という現役時代の経験をもとに、二遊間は中野、木浪、小幡の3人に任せた。今季、奪った併殺数116はリーグ最多。「併殺崩れの走者は失点につながりやすい」という経験則のもと、取れるアウトを確実に取って流れを渡さなかった。

 一方で特筆すべきなのは併殺打を打った数がリーグ最少であるということ。「75」は最も多い広島と29もの差がある。併殺打は相手に守備から攻撃といい流れで向かわせることになり、勢いづかせてしまう。岡田監督が評論家時代に「併殺打と走塁死は相手を勢いづかせてしまうんよ」と語っていたことがあり、自チームの主導権を渡さないために、打順の巡りを考えながら数々の手を打っていた。

 併殺を回避するための送りバント、スチールなど。12日の巨人戦では1死一塁から坂本の打席で一塁走者のノイジーにスタートを切らせ、ヒットエンドランを仕掛けた。結果的に一、三塁と好機を拡大し、木浪の決勝犠飛が生まれたが、たとえ失敗して坂本が倒れれば次の回は木浪から打順が始まる。木浪が出塁すれば投手に犠打を命じ、得点圏に置いて近本&中野で勝負ができる。

 成功すればあえて8番に起き続ける木浪に期待ができる。ダメでも投手まで打順が回り、近本から次のイニングの攻撃をスタートさせることができる。優勝を決めた14日の試合でもヒットエンドランがハマった。カウントを読み、流れの野球を意識する岡田監督だからこその戦術だ。

 また話題になったように、打線が数多くの四球を選ぶ一方、投手陣が与えた四球数もリーグ最少だ。岡田監督は「投手陣も見てるやろうからな」と明かした上で「一つのフォアボールが命取りって言うか、ヒットと一緒っていうな。そういう感覚はピッチャー陣が持ってるんじゃない」と分析した。

 打者の四球数の多さに目が向けられがちだが、投手陣がムダな四球を出さないことで大量失点を防ぎ、ゲームを壊さず、勝機を演出してきた。「このチームは強なるよ」とシーズン序盤に語っていた岡田監督。その言葉を実証するように、オカダの理論を注入された阪神が、長い歴史を誇る野球というスポーツに新たな境地を見いだした。(デイリースポーツ・重松健三)

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