【野球】オリックス・頓宮の2リーグ分裂以降、最低打率の首位打者誕生秒読みで新たな選手評価基準が必要となる
新たな選手評価の指標が必要ではないのか。オリックス・頓宮裕真(26)の2リーグ分裂以降、最低打率の首位打者誕生がきっかけとなってほしい。
オリックスは今月23日、リーグ3連覇に貢献した頓宮が神戸市内の病院で診察を受け、「左第4中足骨の疲労骨折」と診断されたことを発表した。球団によると全治は8週間程度。レギュラーシーズン中の復帰は厳しく、10月18日から始まるクライマックス・シリーズ(CS)最終ステージでの復帰以降で復帰を目指すことになりそうだが、それも微妙な状況だ。
セ、パ・リーグともに優勝が決まり、残り試合はCS出場圏内となる3位以内の確保、そして個人タイトル争いに注目が集まっている。その中でプロ5年目の今季、一塁手としてレギュラーを確保して規定打席をクリア。打率・307で首位打者争いトップの頓宮には自身初の首位打者に輝いてほしいと考えている。
数字が減ることがない打点や本塁打と比べ、打率は1試合ごとに上下する。25日終了時点では2位・近藤健介(ソフトバンク)が6厘差に迫っており最後までタイトルが確定することはないだろう。だが、獲得すればある意味、新たに選手の価値判断基準の必要性が指摘される可能性が生まれてくる。
首位打者のタイトルの価値は重い。日本プロ野球創設期には打率こそが打者を評価する最大の指標と考えられ、打率1位の選手は「打撃王」として表彰され、唯一無二の打撃タイトルだったからだ。
第1号は1936年秋の名古屋軍(現中日)故中根之氏だ。打率は・376で、これが1リーグ制時代の最高打率にもなっている。1リーグ制時代の首位打者の最低打率は1942年の故呉昌征氏の残した打率・286だ。1950年にセ、パ・リーグの分裂して以降は1976年、パ・リーグ所属の太平洋クラブライオンズ(現西武)でプレーしていた吉岡悟氏(74)の・309。セ・リーグでは1962年の故森永勝治氏の・312という記録が残っている。頓宮がこのまま打率・307で首位打者になれば、2リーグ分裂以降では最低打率ということになる。
打率の高低だけがチームへの貢献度や選手の価値ではない。メジャーではOPSという、出塁率と長打率を足し合わせた値が話題とされることが多い。OPSの開発者であるビル・ジェームズ氏(73)は、OPSを用いて打者をAランクからGランクまでの7段階に格付けしており、素晴らしいとされるAランクは・9000以上、非常によいBランクは・8334-・8999だ。日本ではソフトバンクの王貞治会長(83)が通算で歴代最高のOPS1・07999、今季の大谷翔平(29)は1・066という驚異的な数字を残しているが、頓宮が今季記録しているOPS・862という堂々たる数字。だが、吉田正尚(30)がレッドソックス移籍で開いた穴を埋めた、彼の貢献ではそんなものではない。
OPSやタイトルはあくまで数字上のことで、貢献度のすべてではない、と思う。頓宮に限らず、3連覇を果たしたチームのレギュラーがになってきた役割をどう評価するのか。今が新たな評価基準が求められる時期なのかもしれない。(デイリースポーツ・今野良彦)