【野球】なぜ阪神・大山は最高出塁率のタイトルを獲得できたのか 全試合出場を果たした背景にある岡田監督の4番論

 18年ぶりのリーグ優勝を果たした岡田阪神が4日、レギュラーシーズン最終戦となるヤクルト戦を終え、4打数2安打1本塁打2打点と活躍した大山悠輔内野手が出塁率を・403に上げ、首位打者となったDeNA・宮崎との激しいバトルを制して、初めての個人タイトルとなる最高出塁率の勲章を勝ち取った。

 「とりあえず1年、まずは無事に終わったんで良かったのかなと思います」。戦いはまだ終わらない。18日から始まるCSファイナルSを見据えたこともあるだろうが、それでも大山は手放しで感情を表現することなく、短い言葉に充実感と手応えを込めた。

 4番として全143試合に出場し、打率は自己最高タイとなる・288。19本塁打、78打点はキャリアハイではなかったが、ここ一番での勝負強さが光るシーズンだった。何よりも、昨年の59四球から40個も上積みしたリーグ断トツの99四球が、今年の大山の変化を示す指標になったのではないだろうか。

 岡田監督は「ボール球を振らないのはチームのためでもあるし、率を伸ばしていくには自分のためでもあるんやで。去年まではな、そらもったいない打席が多かったように思うからな。ああいう形で選んでいけば、これから率も上がってくると思うからな」と、大山の選球眼について成長と進化を認め、来季以降もさらに出塁率を高めることができると語った。

 岡田監督は開幕前、球団フロントに掛け合い、四球の査定ポイントアップに対する承認を得た。四球イコール単打と一緒。4番となれば相手バッテリーの攻めも厳しくなる。打ちたいという欲に負け、厳しい球に手を出して凡打となれば打率は下がる。安打にできる配球が少ないからこそ、バットで投手を黙らせるという心を落ち着かせ、選球眼を養うことがチームのためとなり、ひいては自らを助ける。

 先発オーダーを書き込む際、岡田監督はまず4番から考える。「4番がコロコロ代わっていてはアカン。強い打線にはならん。みんなが認める4番がいるチームが強いんや」。春季キャンプ前には「やっぱり自覚というかね。このチームでは大山を4番にしないといけないなというのが見えたですね。練習の態度とか、話してみてもね」と語り、大山を打線の顔に据える考えを明かしていた。

 大山も応えた。好調時も、下降線をたどった時も、喜怒哀楽を極力表さず、グラウンドに立ち続けた。さらに、これまでと同様、全力疾走を怠ることもなかった。球団4番打者の全試合出場は2009年の金本知憲以来14年ぶり、生え抜きでは1985年の掛布雅之以来38年ぶり、右打者では1952年の藤村富美男以来71年ぶりで、右打者での最高出塁率獲得は球団初快挙となった。

 四球を選ぶ“快感”を覚えたことで、これまで好不調の波が大きい傾向のあった大山の数字の上下動も小幅に抑えられた。もちろん、最初から四球狙いで打席に入ったわけではない。状況に応じ、相手の心を読み、配球を考える中で、歩いて一塁ベースにたどり着いた。18日から始まるCSファイナルステージ。相手は広島かDeNAか。ライバルの姿はまだ見えないが、大山が進む道ははっきりと見えている。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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