【野球】阪神とオリックスがぶっちぎり優勝した今季 CS制度のルール変更を求めるキッカケになるのか MLBとの違いは
プロ野球史上初となる、レギュラーシーズン最終戦で3位チームと4位チームが直接対決してCS出場チームが決定した今季。2007年から始まったCS制度の導入(パ・リーグは2004年から3年間はプレーオフを実施)により、消化試合を減らすという目的は達成できた反面、阪神、オリックスがぶっちぎり優勝を決めたことで、アドバンテージが優勝チームに与えられる1勝というCS制度のルール変更を求める声は少なくない。
18年ぶりのリーグ優勝を果たした阪神は、2位の広島に11・5ゲーム差をつけており、リーグ3連覇を果たしたオリックスも、同じく15・5ゲーム差をつけた。
近年で同様の事例は2017年にもあった。リーグ連覇を果たした広島が2位の阪神に10ゲーム差。パ・リーグではソフトバンクが2位の西武に13・5ゲーム差をつけて優勝した。
その年のCSがどうだったかと振り返れば、パ・リーグではソフトバンクが日本シリーズに進出して日本一を勝ち取ったのだが、セ・リーグでは3位のDeNAが阪神と広島を打ち破って日本シリーズに進出していた。
セ・パ両リーグでCS制度が導入されてから今年で17年目を迎える(セ・リーグはコロナの影響で20年は実施せず。パ・リーグは1位と2位の対戦のみ)。過去31回の実施で優勝チームが日本シリーズに出場できなかった事例が6度、リーグ優勝できなかったチームが日本一になったのは4度あるが、セ・パ両リーグの優勝チームがともに日本シリーズに出場できなかった事例は過去に一度もない。
ただ、阪神OBの中田良弘氏は「必死に作戦を練って143試合の長丁場を勝ち抜いたチームが、レギュラーシーズンと比べて運も大きな要素を占める最大6試合のファイナルステージで負けることを誰が受け入れられるだろう。特に今年は阪神もオリックスも大差をつけて優勝した年。今年すぐの導入は無理にしても、10ゲーム差以上の大差をつけて優勝したチームには、現行のアドバンテージ1勝ではなく、2勝を与えるという考え方があってもいいのではないかと思う。それが優勝決定以降の消化試合を減らすことにもつながるんじゃないかと思うけどね」との持論を述べた。
全30球団が2リーグ6地区に分かれて戦うMLBでは、地区優勝した6チームと、勝率上位3チーム計6球団がワイルドカードでプレーオフに出場する。このワイルドカードシステムが構築されたのが1994年。ちょうど今年で30年の節目を迎えるのだが、MLB関係者にプレーオフのとらえ方について聞いてみた。
「メジャーではレギュラーシーズンとプレーオフは別物という見方が強いです。こちらでは日本で言う下克上のことを『upset(アップセット)』と呼ぶんですが、ごく普通のこととして受け入れられているように感じますね」と語ってくれた。
一方、日本ではレギュラーシーズンと日本シリーズを別物と見るのではなく、特に優勝チームにおいては同一直線上にある目標物というとらえ方が主流を占めているように感じる。
中田氏は「CSは営業、興行という点においては成功を収めているから、野球をさらに発展させる意味でも一概に否定はしない。ただ、優勝チーム、特に今年のように大差をつけて優勝した年においては、ルールの見直し、新基準の適用があってもいいのではと思う」と話した。
一方、前述のMLB関係者は「日本はメジャーと比べてプレーオフの歴史が浅いこと、公平さを求める日本人の国民性もあって、下克上を受け入れる風土が整いにくいのかもしれませんね」と補足した。
ぶっちぎりでリーグ優勝を果たした圧倒的な強さを見せられるか。1週間後の18日、舞台の幕は開く。(デイリースポーツ・鈴木健一)