【野球】オリックス人気押し上げた大胆SNS戦法 ファン目線でトレンド作り発信、仕掛け人に聞いた

 投手成績のみならずファン層拡大にも貢献した山本由伸
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 巨人56・9万、阪神56・4万、ソフトバンク40・5万、オリックス37・7万。観客動員数ではなく、球団公式インスタグラムのフォロワー数だ。球界を代表する人気の巨人や阪神に迫る勢いでフォロワーを伸ばしているのが、パ・リーグ3連覇を達成したオリックス。地上波テレビ中継の年間回数など露出は他球団と比べて多いとは言えないが、近年着実にファン層を広げた。要因の一つに、SNSを駆使した広報活動が挙げられる。

 フォロワー数は12球団中4位。5月の32万から半年で6万近く増えた。総投稿数1・5万件は飛び抜けて多い。選手の試合での写真だけでなく練習、食事風景、オフショット、動画など、1日に何度も投稿される。SNSを担当する球団職員の仁藤拓馬さんは「僕自身がオリックスの“ファン”として、ファン目線で楽しく投稿しています。チーム内の仲の良さを伝えられればうれしい」と、ほほえましい写真を多数使っている。

 文末の#(ハッシュタグ)も、インフルエンサーをほうふつさせるセンスの良さが目立つ。選手名だけでなく、登場する選手の関係性やチーム内の流行語を取り入れており、そのワードがファンの間で流行するほどだ。山崎福也、山本由伸、山岡泰輔、山崎颯一郎、山下舜平大ら名前に「山」の付いた投手を「#バファローズ山脈」と名付けたグループにして投手王国ぶりをアピール。山本、山崎、宇田川優希と小木田敦也の同級生投手を「#小木田世代」と名付け、仲良しのオフショットを投稿。ファンの心をつかみ、「#」の付いた球団公式グッズ発売にまで至った。

 仁藤さんが「フォロワーが格段に増えた」と振り返るのは、6月に開催された女性ファン向け恒例イベント「オリ姫デー」の一環で推し選手の投票を行った「オリメン」企画。山崎颯や宮城大弥らがパステルカラーの衣装で「#B-CUTE」と名付けられたアイドルグループ風に変身すれば、山本や山岡らは「#B-COOL」と題したユニットとして韓流メークに挑戦。常識を覆す大胆な投稿は話題を呼んだ。

 それだけでは終わらない。両グループに登場しなかった森友哉、頓宮裕真、杉本裕太郎らが試合後のヒーローとして「#B-WILD」のハッシュタグとともに登場。SNS内で新たにユニット化をさせるなど、柔軟な発想で閲覧者を巻き込んでいった。

 8月の「Bs夏の陣」では、お笑いコンテストを連想させる盛り上げ企画「キングオブコンビ」を実施。幼なじみの山本と頓宮による「おとなりさん」、紅林弘太郎と宮城の同級生コンビ「ベニボウズ」など、選手を漫才コンビに仕立てたポスター風写真を多数投稿した。野球から離れた発想を入り口に、プロ野球になじみのなかった閲覧者にも間口を広げた。

 仁藤さんによると、SNSや練習風景の生配信のコメント欄に「この選手のこんな表情が見たい」「この投稿が良かった」など視聴者からの要望が来ることが多く、できる限り応えるようにしているという。試合中もツイッターのトレンドワードなどを随時チェック。「トレンドに上がっている選手や事象を投稿に取り込んで、リアルタイムでファンの方々と一緒に楽しめる投稿を目指している」と、細かい作業が実を結んでいる。

 レギュラーシーズンの観客動員は、日本一とイチロー人気が重なった1996年の179万6000人を大きく上回る球団最多の194万7453人。女性ファンの姿も目立つ。もちろん成績あっての球団人気だが、草の根の営業努力がチームの力になっているのは間違いないだろう(数字は10月12日現在)。(デイリースポーツ・中野裕美子)

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