【野球】なぜ岡田阪神は3連勝で広島をスイープできたのか 9年ぶりに日本シリーズ進出を決めた勝因とは
「JERA CSセ・ファイナルS・第3戦、阪神タイガース4-2広島東洋カープ」(20日、甲子園球場)
圧倒的な強さで18年ぶりにセ・リーグを制した岡田阪神が、甲子園で初めて開催されたCSファイナルSで3連勝を飾って広島を下し、2014年以来9年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。10月4日のシーズン最終戦からのブランクを心配する声もあったが、DeNAを連破して勢いに乗る広島に王者の強さを見せつけた。勝因はどこにあったのだろうか。
決戦前、岡田監督は「普通にやるだけやんか。別に変わったことやる必要ない」と言った。実戦勘という部分では、ファーストSを連勝で勝ち上がった広島が有利だったかもしれないが、自然体、普段着野球を貫くことが何より大事だと位置づけた。その言葉通り、スタメン野手は3試合とも同じだった。
3戦連続で先制点を許す展開は阪神らしくなかったが、追いかける側に回っても全く動じないという点においてはレギュラーシーズンと全く同じで、得点シーンもシーズン同様に今年の阪神を象徴するパターンだった。
1点を追った四回1死一塁。大山がストレートの四球を選んだ。際どい判定が続いていただけに、内野陣がマウンドに集まった際、床田が捕手の坂倉にストライク、ボールの判定を確認するようなしぐさがあった。秋村球審との“相性”は決して良いとは映らなかった。佐藤輝は浅い左飛に倒れたが、ノイジー、坂本の連続適時打で一時逆転に成功したのは、今季リーグ最多の494四球をつかみ取った選球眼が、床田の心理に影響を与えた可能性は否定できない。
六回の勝ち越しの場面も四球が絡んだ。2死一塁からノイジーがフルカウントから四球を選び、続く坂本が床田が何度も首を振って選択した直球を右前に落とした。七回に森下が押し出し四球を選んだ場面も、直前で中野が四球を勝ち取っていた。
岡田監督は開幕前、四球の査定ポイント改善を球団フロントに訴え、承諾を得た。「フォアボールはヒット1本と一緒やんか」。昨季の358四球から、今季は136個増の494四球。単純に1試合で約1個の四球増となり、チーム打率はリーグ3位ながら、総得点555は堂々のリーグトップ。サヨナラ勝ちを飾った19日も九回に坂本が四球を選び、木浪の劇打につながった。レギュラーシーズンから、四球を絡めて得点に結びつけるスタイルを確立し、CSでも変わらぬ野球で勝利を導いた。
岡田監督は「ピッチャー陣はシーズン通りやったけど、打つ方はシーズン通りいかなかった。3戦とも苦しいゲームやった。でも、最後は優勝チームとして負けられないというのがあって勝ち切れたと思う。広島のピッチャーはどんどん攻めてきてフォアボールを出さないというか、そういう感じだったので。最後の最後にね、競ってると甘い球も投げられないのでフォアボールが絡むというか。今年1年徹底したそういうスタイルが、一番いいとこで出たね」とある程度の満足感を漂わせていた。
阪神OBの中田良弘氏は「阪神の強さが出たね。先発投手が最少失点でしのいで、リリーフ陣は無失点。先制されたけど、最少失点で抑えたからバタバタもしなかったし。攻撃では四球を絡めた得点スタイルを継続できた。広島は守備の乱れが失点につながったけど、阪神はノイジー、中野、森下と球際の強さが目立った」と解説し、日本シリーズに向けても「相手がどこだろうと、この野球ができれば心配することはない。今年の総決算となる野球を見せてくれると思うよ」と、38年ぶりの日本一に期待を寄せた。
28日にCSファイナルSを勝ち上がったパ・リーグの本拠地で始まる日本シリーズ。オリックスが相手ならば、南海と対戦した1964年以来、59年ぶりの関西ダービーとなり、ロッテが相手となれば4連敗の屈辱にまみれた2005年来、18年ぶりのリベンジマッチとなる。(デイリースポーツ・鈴木健一)