【野球】クールなイメージを覆した阪神・坂本の闘争心あふれる姿 バット投げつけ 指さしで木浪を鼓舞 SNSではMVPの声

 阪神が広島に3連勝を飾って9年ぶりの日本シリーズ進出を決めたCSファイナルSで、捕手・坂本誠志郎の見方がガラリと変わった。

 これまでは正捕手・梅野の陰に隠れていた部分もあり、どちらかというと、クールで寡黙なイメージを抱いていた。だが、この3試合で見せた坂本のプレーは、熱い魂のほとばしりを感じさせるアクションの連続だった。

 18日の初戦。同点の五回1死で、九里のシュートが右腕に当たると、鬼の形相でバットを地面に叩きつけて怒りをあらわにした。スタンドのファンも温厚なイメージを持っていたようで、一時騒然とした空気が漂った。坂本の感情に導かれるように木浪が右前打で続き、村上、近本の連続適時打で一気に3点を勝ち越した。

 19日の第2戦では、同点の九回2死一、二塁から四球を選ぶと、次打者の木浪を指さし、大声を張り上げるシーンがあった。サヨナラの右前適時打を放った木浪はお立ち台で「坂本さんがフォアボールで出て、『任せたぞ』と合図をくれたので、ここで決めようと思いました」と意気に感じたことを話している。

 20日の第3戦では、ノイジーの右前適時打で同点に追いついた直後の四回2死一、三塁から初球を捉えて左前に一時勝ち越しとなる適時打を放つと、絶叫しながら一塁に駆け出し、一塁ベンチを指さして感情を爆発させた。坂本は「打つ方でずっと迷惑かけてたんで、なんとか貢献したい思いが、ちょっと出ちゃいました。全然ダメだったんで、開き直っていくしかないなっていう感じで、いいところに飛んでくれてよかったです」と振り返ったが、満員で膨れ上がった甲子園のボルテージは一気に高まった。

 本職のリード面でも高く評価された。CSの「GAORA」で第2戦の解説を務め、横浜、米大リーグ・マリナーズで活躍した佐々木主浩氏は「すごいキャッチャー。すごいリード。坂本って、ここでこの球?っていうリードができるんですよね。本当すごい!」と配球面を絶賛し、何度もうなっていた。

 CSのMVPは第2戦でサヨナラ打を放ち、第3戦でもマルチ安打した木浪が獲得したが、SNSでは「MVPは坂本やろ」「投手陣を引っ張ってまとめた誠志郎の活躍はデカいで」「3試合を4失点に抑えたのは坂本のおかげ」「坂本がおらんと思ったらゾッとする」「もう第2捕手じゃないね」といった反応であふれていた。

 8月13日のヤクルト戦で梅野が左尺骨を骨折して戦線離脱して以降、坂本は主戦捕手として投手陣を引っ張り、梅野に勝るとも劣らないブロッキングで本塁を死守し、米大リーグ・パドレスのダルビッシュから絶賛された抜群のフレーミング技術で投手優位のカウントを整えた。

 阪神OBの中田良弘氏は「今のチームにおいて、坂本は一番欠けてはいけない存在。リード面では完全に投手陣の信頼を得たと思うし、女房役としての安定感、安心感が身に付いた。経験を積んだことで自信になって、結果につながったことで、信頼を勝ち取った。熱いプレースタイルでチームを鼓舞する姿もいいよね」と解説した。

 岡田監督は試合後の場内インタビューで「もう守るだけでね。本当は打つのは期待していないんですけど。そういう選手が打ってくれるとやっぱり勝ちますよね」とスタンドを笑わせながらも、四回に続いて六回に放った決勝の右前適時打を高く評価した。

 28日から始まる日本シリーズ。38年ぶりの日本一をかけた戦いで扇の要を担う。頭は冷静でも、プレーは熱く。グラウンド上の司令塔が、頂上決戦でも唯一無二の存在感を示す。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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