【野球】なぜ阪神は難攻不落のオリックス・山本を攻略できたのか 戦前の挑発発言、DH・渡辺諒、佐藤輝の盗塁 岡田マジックが炸裂

 「SMBC日本シリーズ2023、オリックス・バファローズ0-8阪神タイガース」(28日、京セラドーム大阪)

 59年ぶりの関西決戦となった日本シリーズ初戦。38年ぶりの日本一に挑む阪神が、2年連続投手4冠のオリックス・山本由伸を攻略し、好スタートを切った。6月13日の交流戦では8回2安打無得点と封じ込まれていたが、なぜ難攻不落の右腕を攻略することができたのだろうか。

 4回まで無得点。しかも、四回には相手のミスも絡んだ無死一、二塁の絶好機を生かせず、流れが重くなりかけていた。

 五回、先頭の佐藤輝が中前打。続くノイジーの初球、岡田監督が仕掛けた。144キロのフォークをノイジーが空振りしたが、一塁走者の佐藤輝がスタートを切り、懸命のヘッドスライディングで二塁を陥れた。

 序盤から山本-若月のバッテリーはフォークを多用。森下、大山らがタイミングが合わずに苦しんでいたが、岡田監督は相手の配球傾向を逆手に取った作戦で風穴をこじ開けた。シーズン7盗塁の佐藤輝に意表を突かれ、山本の心にも少なからずの衝撃が走ったはずだ。

 ノイジーの右飛で佐藤輝が三塁に進むと、指揮官は新しいパインアメを口に運んだ。ここでDHに抜てきした渡辺諒がツーシームに詰まりながらも先制の中前適時打。第1打席は3球三振。交流戦では3打数無安打。日本ハム時代を含めて通算8打数1安打と決して相性がいいとは言えない渡辺諒をDHで起用した岡田采配も見事にハマった。

 木浪の右前打を挟んだ1死一、二塁の場面では、相手のミスに助けられた。送りバントを試みた坂本の打球はマウンド前への小飛球になった。だが、山本はダイレクトキャッチ。走者がスタートを切れるはずもなく、ワンバウンド捕球されていれば併殺でチェンジとなっていた。走者を進めることはできなかったが、2走者が残ったことで近本の2点適時三塁打、中野にも追い込まれてからフォークに対応した左前適時打が生まれ、一挙4得点のビッグイニングにつながった。

 日本シリーズ前、岡田監督は山本について「そんなええと思てない。なんで点取れへんのやろなと思てる。そんなええんかなと思てるよ、俺は。はっきり言うてな。毎年あないして勝ってるからええんやろうけど。打たれへんのかなあと思うよな。山本、山本言うけど、第1戦に投げるピッチャーとしか思うてないよ。5つか6つくらい負けてるんやろ。大竹2つしか負けてないやん」と岡田節を炸裂させていた。

 攻略の糸口については「そら真っすぐ(狙い)やろ」と力を込めた。この発言でオリックスバッテリーがいつもより直球の割合を減らし、序盤から変化球多めの配球にシフトした可能性も考えられる。それでも4点を奪った五回は、配球パターンの変更が多くなる2回り目の佐藤輝、渡辺諒、3回り目の近本が山本の直球をきっちり仕留めた。六回の木浪の左前適時打も直球を射抜いた。指揮官の『まき餌』が確実に得点に結びつき、六回途中で自己ワーストタイとなる7失点KOに追い込んだ。

 岡田監督は佐藤輝の二盗について「いやいや読むっていうか、中野がその前にアウトになってるから、あれで来ないと思うやんか」と配球面に加え、初回1死一塁から中野が盗塁死(三振ゲッツー)したことによって、オリックスバッテリーが『もう走ってこないのでは』と警戒が緩む思惑もあったことも明かした。

 戦前の挑発発言、「なんか打つと思ったから」という渡辺諒のDH起用、佐藤輝の二盗と、打つ手がハマっての快勝には「そらみんなああやってヒット出たから、そら楽になってるよ。明日のゲームの入り方は、だいぶ楽に入れる。全然違うよ」とえびす顔で振り返った。

 阪神OBの中田良弘氏は「やっぱり今日は相手の配球パターンとマークを読んだ上での佐藤輝の盗塁が大きかったね。誰もイメージしてなかったと思うし。フォークの多さも見越した上での作戦。あれで山本はかなり動揺したと思うし、配球も見直さないといけなくなった。渡辺諒のスタメンDHにも驚かされたけど、今シーズン通じていた岡田監督の神がかった采配が、この試合でも光った」とし、「この1勝は大きい」と声を大にした。

 初戦を制した勝利、エース・山本を打ち砕いた勝利、ビジターで得た勝利、敵の考えの裏をかいて奪った勝利、4連敗で散った2005年の悪夢を消し去る監督としての日本シリーズ初勝利。いろんな意味で大きな1勝を阪神がつかんだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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