【野球】球史に残る大乱闘で「灰皿をたたき付けた」巨人投手が中日のスター選手に左ストレート 今だから言える舞台裏

巨人現役時代の関本四十四(1974年)
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 現代プロ野球では見る機会が少なくなった乱闘劇。かつて、その“主役”となった経験がある元巨人投手・関本四十四氏(デイリースポーツ評論家)が、大騒動の舞台裏と後日談を明かした。

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 1975年7月3日、巨人-中日。札幌円山球場で球史に残る大乱闘劇は起こった。

 場面は巨人2-0の六回、中日攻撃の1死一、三塁。三ゴロで飛びだした三走・高木守道が三本間で挟まれ、最後は巨人投手の関本がタッチした。この際、高木が時間を稼ごうと倒れ込んだことにより、タッチが顔面に当たってしまった。

 高木は激高。立ち上がって勢いよく詰め寄ると、これに反応した関本が左ストレートを繰り出し、両軍総出の大乱闘となった。

 当時の状況を関本が語る。「中日は2併殺かな。得点が入らずイライラしていたのは伝わってきていた。タッチも打者走者がセカンドに行く動きが見えたから、急いでグラブを出したら高木さんがしゃがみ込んだものだから、アゴに当たってしまったんだ」という。

 関本は前年に最優秀防御率のタイトルを獲得するなどしていたが、当時はまだ26歳。一方の高木は34歳で中日のスター選手だった。三塁側からはベンチ裏でマッサージを受けていた星野仙一も飛び出し、新宅洋志は関本を目がけて跳び蹴りを繰り出した。

 両軍もみくちゃ。だが、関本自身は意外にも冷静だったという。「手が出てしまったが、けがをさせちゃまずいとボールは右手に持ち替えたんだよ。マッサージを受けていた星野さんが出てきたのも分かった。新宅さんの跳び蹴りもよく見えたから、ヒョイッとかわしたら倒れ込んで肩か腰かを痛めていた」。

 結局、手を出したとして、関本のみが退場。同僚の王貞治は「たまたまああいうことになっちゃったんだよ」と擁護したが、試合後、巨人は関本に独自のペナルティとして5万円の罰金処分を科した。

 騒動には続きもある。「宿舎に戻ると、マネジャーが『上の部屋にリーグの会長と長嶋監督がいるから謝ってこい』と言うんだよ。俺は『冗談じゃない』と。『勝利を追求するためにやったんだ』と言った。それでも会長の部屋に行くと、処分の話をするもんだから、灰皿をたたき付けたんだ」

 結局、連盟からはお咎めなし。巨人の罰金も5万円から1万円に減ったという。「今でもホリさん(堀内恒夫氏)からは『こいつは罰金を1万円にしたんだ』と言われるよ」と、笑った。

 現代では侍ジャパンや合同自主トレの影響などで、相手チームとの距離感が縮まり、乱闘も少なくなった。

 「もちろん、今だって同じだろうが、勝利を追求するためだけに集中していたから」と関本氏。後日談もあり、高木氏とは和解もしていたという。「高木さんとは1年後くらいかな。駅のホームで会ったから謝ったよ。そしたらコーヒーをおごってくれたよ」。

 騒動から48年経過した今も、当時の記憶は鮮明に残っている。(デイリースポーツ・佐藤啓)

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