【野球】オリックス・杉本 場を和ます天才的センス Vパレードあいさつ「何卒(なにそつ)」は絶妙トリックプレー
オリックス・杉本裕太郎外野手は場の空気を一瞬で変える天才だ。23日に大阪市内と神戸市内で開催された「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』」のオープニングセレモニー。カンペを読み上げるあいさつで、ファンの笑いを独占した。
朝から警察官やSPらが警備し、緊迫した雰囲気に包まれた午前中の大阪では「来年は4連覇を目指すシーズンになりますので、より厳しい戦いになると思います。引き続き熱いご声援を“なにそつ”よろしくお願いします」と、「何卒(なにとぞ)」をわざと誤読して笑いを誘い、場を和ませた。
午後の神戸では冒頭に「こんにちは~。阪神のパレードが終わっても残っていただいたみなさん、ありがとうございます」と読み上げた。爆笑をさらい、阪神のパレードが終わった会場を再び温めた。さらに「今日は3連覇の喜びを分かち合いたいと思いますので、最後まで“なにそつ”よろしくお願いします」とかぶせて大喝采。パレード後には「なんか言わなあかん雰囲気あるんで。そこは自信あります」とアドリブで場を和ませたことを種明かしした。場の空気を敏感に読み、言葉を絶妙に使いこなすセンスは球界随一だろう。
リーグ3連覇の中心選手、今季からは選手会長としてチームを背負う責任感に満ちている。本塁打を打てば、大好きな漫画「北斗の拳」のキャラクター・ラオウの“昇天ポーズ”。マイクを向けられれば「一片の悔いなし」の決め言葉。阪神に注目が集まりがちな関西で、人気獲得へ一役買う。好調な時も苦しい時も、その姿勢は変わらない。
ロッテとのCSファイナルSは打率・429でMVPを獲得したが、10月21日の第4戦(京セラ)で左足首を痛めた。ケガの影響で阪神との日本シリーズは11月2日の第5戦(甲子園)から出場。「5番・左翼」で先発出場も3打数無安打1三振に終わり、試合は2-6で敗れた。
試合後、うつむいて足を引きずる杉本に、10日ぶりの試合復帰について質問を向けた。すると悔しさを押し殺して顔を上げ、時折少しの笑みさえ浮かべながら「うれしかったです。出られて。トレーナーさんもずっと治療してくれたし、トキにもすごい治してもらったので。プレーして、まずはよかったです」と返答。「北斗の拳」の登場人物の名前を出すユーモアも交えて振り返り、実戦感覚などについても冷静に分析した。
「なにそつ」はこの日のX(旧ツイッター)でトレンドワードにもなった。「ユーキャン新語・流行語大賞2023」のノミネートは既に終了したが、野球ファンの間で「なにそつ」がオリックス4連覇&日本一奪還のキーワードになる可能性は十分だ。(デイリースポーツ・中野裕美子)