【野球】盗塁数3倍と急増の広島 代走の切り札・羽月 阪神近本と争う来季盗塁王へ自信深めた8月の一戦とは
広島の今季チーム盗塁数が昨季の26個からリーグ2位の78個に急増した。それを支えた一人が、チームトップの14盗塁を記録した羽月隆太郎内野手(23)だ。鯉の韋駄天(いだてん)は会心のスチールに8月11日・中日戦(バンテリン)で決めた二盗を挙げる。あらゆる要素が凝縮された盗塁に込められた思い、レギュラー奪取の先に抱く“野望”に迫った。
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抱いたワクワク感は「セーフ」のジャッジの瞬間、大歓声に変わった。今季、羽月の盗塁企図数は20で成功数は14。何度も足で魅せ、代走の切り札に成長した。「僕が出る場面は勝つか負けるか。負けから同点にして勝つか、同点で勝つかがほとんど。今年一番は中日戦です」と胸を張る。8月11日・中日戦の延長十二回に決めた今季11盗塁目が“会心の二盗”だったという。
2死一塁で相手投手は田島、打席に坂倉。羽月はカウント2-1からの4球目に走ってセーフになった。「田島さんのクイックは1秒を切る。恐ろしく速い」。捕手の送球が1・8秒、二塁塁上でのタッチが0・2秒、投手のクイック0・9秒と頭の中で即座に計算し「2・9秒の間に走ることになる。僕たちの足で2・9秒は無理なんですが、その時は盗塁が決まった」。
ほぼ絶望的な条件からの成功。「2ボール1ストライクで(次の球は)フォークか外角直球だと思った。2択です。坂倉さんなら、外角直球を打ってくれるかなと思ってスタートを切った。すると投球がフォークでセーフになれた。そんな感じの駆け引きでした」
相手バッテリーの配球、味方打者の特徴、あらゆる要素を瞬時に見極めたスチールには、自身の成長の跡が凝縮されていた。「次に代走に出てきた時に相手は『うわぁ』ってなる。それだけで僕の価値が上がるし、打者も楽。チームプレーの一つです」と話した。
自身の理想は2年連続4度目の盗塁王に輝いた阪神・近本。今季の近本は28盗塁で成功率は・903だった。近本にあって自分にない部分は「スタート(スタメン)で出ているか、出ていないかですね」と苦笑い。総合力を向上させ、レギュラー奪取を狙う日々。そして先発出場が増えた先に抱く野望は近本との盗塁王争いだ。
「土俵が一緒なら、勝てるか負けるか分からないけど、いい勝負ができると思っています。同じ土俵に立ちたい」と目を輝かせた。来季も盗塁技術向上へ余念はない。「まだ速くなれる。限界を作らず、追い求めていきたい」。スピードスターとしての価値を高めて、来季も貪欲に走る。(デイリースポーツ・向亮祐)