【野球】広島引退の一岡氏が球団アナリストへの転身を決断した背景とは 「あれがなかったら別の仕事を選んでいた」
今季限りで現役を引退した広島の一岡竜司氏(32)が、来季はチームのデータ分析を行うアナリストに転身する。現在は球団に足を運び準備中。「とても興味のある分野。勉強して、選手にわかりやすい言葉でコーチを通して伝えていきたい」と意気込んだ。
球団に残ると決断した裏側には、10月1日の阪神戦があった。
「最後、引退試合をしてもらった。あれが一番大きい。もしなかったら、別の仕事を選んでいた。あそこまでしてもらって、球団から話があったなら残ろうと思えた。10月1日のおかげ。家族も納得してくれていた」
今季最終戦として迎えた満員のマツダスタジアム。始球式では、背番号30のユニホームに袖を通した妻と3人の息子が登場し、長男と次男が元気な球を投げ込んだ。本拠地は温かい拍手に包まれた。
現役最後の登板は六回だった。新井監督から白球を手渡されるとオール直球勝負。最後は144キロの直球で島田を見逃し三振に切り、中崎にバトンを渡した。引退セレモニーでは仲間の手で8度、宙を舞った。
「10年間契約してもらい、最後もああいう形で家族ごと良い思いをさせてもらった。感謝の気持ちを家族も持っていた」。
現役引退発表後、カープ以外からさまざまな仕事依頼があった。順位争いをしていたシーズン最終盤。その中でも盛大に送り出してくれた。カープへの恩返しを決めた。
プレーを解析する「ホークアイ」や投球の回転数や軸などを数値化する「ラプソード」を分析し、より良い戦術やプレーにつなげられるような情報を提供するのが新たな仕事だ。投手出身だけに課題は野手のデータ分析。「これから勉強していかないといけない」と力を込めた。
「ホークアイ」では打球速度や打球角度、打球方向の割合、守備でも位置など数多くの情報が収集できる。「興味を持っている選手の手伝いをしたい」。技術向上などに役立つ情報を提供していく。
プロ12年で290試合に登板して17勝14敗7セーブ、84ホールド、防御率2・76の成績を残した。思い出に残っている試合は「横浜スタジアムの試合全部」と即答した。
「満塁から出て行って5球で6失点(18年8月17日)とか、20年のサヨナラ満塁ホームラン(7月24日、佐野に逆転サヨナラ満塁本塁打被弾)。嶺井がいるのにウィーランドが出てきて四球を出してサヨナラ(18年8月3日、同点の延長十一回2死一、二塁。嶺井の場面で代打・ウィーランド。四球を与えて倉本にサヨナラ打)とか。抑えた試合は覚えていないですね」。そう言って苦笑いした。それでも悔しい記憶も今では財産だ。
アナリストとして新たな野球人生が幕を開ける。「不安のほうが10割です」。地道な分析と頭をフル回転させ、新井カープを支える。(デイリースポーツ・市尻達拡)
◆一岡竜司(いちおか・りゅうじ)1991年1月11日生まれ。福岡県出身。投手。右投げ右打ち。身長179センチ、体重86キロ。愛称は「イッチー」。大分・藤蔭高から沖データコンピュータ教育学院に進学。3年時には、JR九州の補強選手として都市対抗に出場した。11年度ドラフト3位で巨人に入団し、13年オフ巨人へFA移籍した大竹の人的補償として広島に移籍した。