【野球】来春から新基準の“低反発バット”導入の高校野球 現場の指導者のリアルな声とは
11月下旬、星稜が32年ぶりに明治神宮大会・高校の部を制して、今季の高校野球の主要大会は幕を閉じた。夏の甲子園大会では慶応が107年ぶりに頂点に立つなど例年以上に盛り上がりを見せた高校野球界。来春からはいよいよ新基準となる低反発バットが導入される。
22年2月にけが防止の観点から金属バットの反発係数など新基準が制定された。現行のバットより細く、打球部の肉厚を厚くして低反発にし、打球速度を抑える仕様に。簡単に言えば“飛ばない”バットに変更されるのだ。2年間の移行期間が終了し、来春の都道府県春季大会、第96回センバツ大会からいよいよ導入が開始。来春に向け、現場の指導者たちは試行錯誤を続けている。
大阪桐蔭の西谷浩一監督は、神宮大会敗戦後に新基準のバットをチームとしてはまだ取り入れていないと明かした上で、展望については「飛ばないのは事実だと思う。何か対策を考えていきたいと思います」と話すにとどめた。徳丸やラマルなどを擁し、強打を誇るチームはどのように対応し、春を迎えるのか注目だ。
13年ぶりに神宮大会に出場した北海は同大会に出場した8チームの中で唯一、新基準のバットを試合で使用した。その理由を平川敦監督は「冬の北海道は外で練習ができない。出来ることは早めに対策しないと」と説明。バットへの対応には「難しいと思う。時間がかなりかかるんじゃないかと思います」とし「芯に当てる技術を磨かないと」と見解を述べた。
「本当に飛ばない」との意見をほとんどの指導者が口にする中、一定数聞かれるのが「バットを振れる子は関係ない」との声だ。広陵の中井哲之監督は「徐々に対応していくしかない」とした上で「バットを振れる子は全く関係ない。バットを振り込んでいきたい」と冬を見据えた。
U18高校日本代表の小倉全由新監督は新基準のバットへの移行が正しいスイングにつながることを期待した。「一時は『フライ革命』でバットが下から出ていくような選手が多くなっているなと見ていた」とし、「各チームで正しいスイングを身につけさせてくれているのかなと。春の選抜が楽しみです」と期待を寄せた。
この機会をチャンスと捉えている高校もある。春夏合わせて4度の甲子園出場を誇る公立校・洲本の宝谷祐哉監督は接戦が増えると予想。延長からはタイブレークとなる現行のルールを踏まえて「打てないチームにもチャンスがある」と私立に比べ、選手の力が劣っている公立校にとってはプラスに作用するのでは推測した。
各チーム、練習設備や戦力差がある中で、新基準バットを使用する点では同じ条件の1年目となる来春。戦い方に正解はないが、この変化にいち早く対応できたチームが“新しい高校野球”を制する結果になりそうだ。(デイリースポーツ・高橋涼太朗)