【ボクシング】井上尚弥の「適正体重」へと自分をコントロールする力 世界最速1年での2階級4団体制覇

 「ボクシング・世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦」(26日、有明アリーナ)

 WBC・WBO王者の井上尚弥(30)=大橋=が、WBA・IBF王者のマーロン・タパレス(31)=フィリピン=を10回1分2秒KOで下し、テレンス・クロフォード(米国)に次ぐ史上2人目、史上最速5年7カ月で2階級での4団体統一を成し遂げた。

 驚くべきは、2階級での4団体を制覇した期間がたった1年ということだ。これは、クロフォードの6年を大幅に更新する世界最速となる。

 バンタム級とスーパーバンタム級は1・82キロ差。ここでの2キロにも満たない差がボクサーにとってはとてつもなく大きい。

 階級を上げる難しさは、多くの名選手が経験している。減量から解放されることで、練習の質や集中力には効果を出す。一方で、相手のパンチ力や耐久力も当然増すため、攻撃が通用しなくなったり、防御で自分が耐えられなくなったりする。その階級に合った体づくりには、数試合、1年ほどかかる選手が多い。

 元3階級制覇王者の長谷川穂積氏は、自身がバンタム級で10度防衛後に1階級飛ばしてフェザー級に上げ、初戴冠から11年後にスーパーバンタム級を制して3つのベルトを手にした。階級を変えるタイミングの機微を経験した中で、ボクサーの適正階級について、「ナチュラルウエートから減量しても、最もパンチ力が乗る体重」と説明していた。

 井上は、7月のフルトン戦で初めてスーパーバンタム級で戦ったばかり。しかし、5カ月後のこの試合の前日計量後には「(この階級への)フィット感はかなりある」「体をつくる過程で、こうしたらいいというのが見えて、前回よりもっとプラスに仕上げることができた」と話していた。

 防御に優れたタパレスは、体重を後ろ足に乗せて相手から顔を遠ざけ、うまくダメージを受け流すパンチの受け方をしていた。その相手に井上は、判定が「頭をよぎった」と話したが、それでもダメージをしっかり蓄積させ、10回の強打で決着をつけた。今が「最もパンチ力が乗る体重」であることを証明した。

 47・97キロのライトフライ級から55・34キロのスーパーバンタム級まで、井上が4階級を転級する中で、非力さを見せたことはない。常に「適正体重」へと持っていく。フィジカルを完璧にコントロールできるのは、地道な努力はもちろん、天賦の才もあるだろう。

 その王者が現階級を「適正階級」と言い、来年もここを主戦場にすると明言している。自分の力を最大限発揮できる場所で、どれだけの強さを見せるのかが期待される。

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