【スポーツ】バスケW杯歴史的勝利の裏側 22歳とは思えない河村の“神対応”
2023年は数多くのスポーツで彩られた。その1つが48年ぶりの五輪自力出場を決めたバスケットボール男子W杯。沖縄で行われた熱戦は、列島を感動の渦に巻き込んだ。
司令塔として活躍したのは河村勇輝(22)=横浜BC。はきはきと冷静に話す姿が印象的だが、彼はW杯の歴史的勝利の瞬間も22歳とは思えない対応を見せていた。
8月27日のフィンランド戦。最大18点差から逆転し、日本は欧州から初めて白星を挙げた。河村は25得点、9アシスト。NBAで活躍する213センチのラウリ・マルッカネンにマークされながらも、第4クオーターには4本中4本の3点シュートを沈め、勝利に大きく貢献した。
試合後の取材ゾーンは戦場だった。戦士達の言葉を聞き逃すまいと、大勢の報道陣が詰めかけた。河村の場所は特に人が多く、記者は運よく囲み取材の最前列を勝ち取れたものの、他の記者に押されに押され、JR山手線の満員電車と勘違いするほど人間の圧力を感じていた。
選手と報道陣の間には簡易な柵が立てられている。最前列の記者達が柵に押しつけられて、苦しい表情をしていたのだろう。河村は「大丈夫ですか?」と心配してくれた。続けて報道陣全体に「みんな焦らないで!ちゃんと大きな声出しますから」と気遣いもしてくれた。
まだまだ“神対応”は続く。記者が選手に質問をする順番は基本的にランダム。簡単に言えば「言ったもの勝ち」だ。3人以上の記者が同時に質問するため、声が混じって誰が何を言っているか分からない状態だったが、河村は「じゃあ白いシャツの方お願いします」と、特徴を言いながら1人ずつ記者を指名していった。まるで会見時の司会者。そこからはかなり円滑に取材が進んだ。
歴史的大勝利を収めた直後で、さらにMVP級の活躍をしたのに落ち着きすぎていた22歳。もう少し浮かれてもいいんじゃないかとも思ったが、おそらく人生3週目ぐらいなんだろう。そう思わせるほど河村勇輝はナイスガイだった。(デイリースポーツ・谷凌弥)