【スポーツ】箱根駅伝 7度目総合Vの青学大 名将・原監督が考える長期指導の重要性

 2、3日で行われた第100回箱根駅伝は、青学大の2年ぶり7度目の総合優勝で幕を閉じた。大会前は昨年の大学三大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)を制し、今季も“3冠”に王手をかけていた駒大の1強かと思われたが、ふたを開けてみると、青学大が2位に6分35秒差をつけて、大会新記録をたたき出す圧勝だった。

 導いたのは、直近10年で7度も箱根を制する常勝軍団を作り上げた原晋監督(56)。就任20年を迎えた名将は、レース後に大学スポーツの長期指導の重要性を語っていた。

 陸上長距離の強化システムを「農耕民族系」と比喩。「畑を耕して、種をまいて、水を入れて、肥料を入れて、光りを照らしながら時間をかけて作物を作るようなスポーツ」と例え、「大学スポーツの指導者は(任期)2巡目から力を発揮する」と、長期間の育成が必要との持論を展開した。

 大学スポーツ指導者の契約は「だいたい3~4年」。自身も就任当時の2004年は、嘱託契約で3年以内の結果が求められた。ただ箱根予選会を初めて突破できたのは2009年。5年の歳月を費やし、1度目の任期が迫った時は各所に頭を下げて、契約延長を申し出たこともあった。

 箱根駅伝を目指す学生の大半は、陸上競技に青春をささげてきたような選手達。これまで競技に打ち込んできた自負もあり、「前の監督はこうだったのに」と、新監督とは意見の相違から衝突することが必ずと言っていいほど起こるという。

 そんな環境の中、任期3~4年の短期間で結果を出すことは至難の業。チーム環境を整えているうちにまた監督が代わってしまい、悪循環となって箱根駅伝で勝ち続ける大学が育たないという。

 第100回大会は、その傾向が顕著に出たとも言える。6位に入った法大の坪田智夫氏は、2013年に監督就任。最初は予選会落ちも経験したが、今回は直近10年で最高の6位に入った。国学院大の前田康弘監督は2009年に就任。10年以上たった今、6年連続でシード権を獲得している。中大は今回こそアクシデントで13位にとどまったが、2016年に就任した藤原正和監督の元、第99回大会(2023年)は、古豪22年ぶりの2位に輝いている。

 一方、昨年まで箱根路を沸かせていた東京国際大は、大志田秀次監督が退任し、今回まさかの予選会落ち。優勝12回を誇る名門・日大は直近10年間で5度も監督が代わり、シード権は2014年から遠ざかっている。

 箱根駅伝で勝ち続けている大学は、大学名を聞いただけで監督の顔が浮かぶ。他のスポーツでは短期間で結果を出す名将の存在も耳にしたことはあるが、山登り、山下り、天候とあらゆる外的要因がかかる特殊レース・箱根駅伝には、原監督の考え通り、長期間の指導法が必要なのかもしれない。(デイリースポーツ・谷凌弥)

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