【野球】広島〝新井流マネジメント〟で6年ぶりVへ 西川退団も中堅ベテラン積極休養方針→若手の「チャンス」
取材現場の舞台裏を描く新企画「記者が見た スポットライトの裏側」。今回は、6年ぶりの覇権奪回に挑む広島・新井貴浩監督(46)について。昨季はチームを2位に押し上げた中、打線の中軸を担った西川がFA移籍し、今季は若鯉の台頭が望まれるシーズン。就任2年目の指揮官が抱く構想を紐解く。
新井監督は昨季について「末包、田村、矢野、羽月と若い選手がすごくいい経験をしてくれた」と振り返る。ただ、そういった選手が不動のレギュラーになれていない現状も課題として残った。
2位に躍進したチームが昨年組んだ打順は117通り。例えば日本一に輝いた阪神は69通り、パ・リーグ3連覇のオリックスのオーダーは135パターンだった。一概にどちらがいいとは言い切れないが、新井監督の理想は自身も現役だった2016~18年の3連覇時のチームだ。
上位打線は田中、菊池、丸、鈴木と不動。「やっぱり固定できるのは理想。カープの優勝時は固定できていたから」と指揮官。抱く理想はありながら、今のチームの“現在地”も冷静に見つめる。「(今の)ウチは発展途上のチームで発展途上の選手が多い。固定はできないと思う。昨年と同じような感じになると思うよ」。その口ぶりに、悲壮感は全くなかった。
就任1年目の戦いをベースにしながら改善策は打つ。昨季は夏場以降、秋山、西川、菊池、上本、野間ら主力の離脱が相次いだ。ペナントレース佳境の時期にベストメンバーを組めなかったことに指揮官は「自分のマネジメントミスだと反省している」と唇をかむ。今季は同じ轍を踏まないよう、中堅やベテランには昨年以上に休養を与えながら起用する方針。そこに今季を戦い抜く鍵がある。
「中堅、ベテランの選手には、休みをもっと作っていかないといけない。そこに若手が経験を積めるチャンスの場が出てくる。どれくらい経験を積んで力を付けてくれるか」
主力の休養時、若鯉たちはいかに存在感を発揮できるか-。それが、ポジションを奪うための足がかりにもなる。西川が抜けて空く外野の枠には1軍で一定の結果を残す末包に加え田村、中村貴、久保。内野なら林、内田も控えている。新外国人のシャイナーは一、三塁と外野を守り、レイノルズは内野全てを守れる。
すると起用法には多くのバリエーションが生まれる。勝利を最優先に掲げつつ、若手の成長も後押しする今季の戦い。「本当にみんな、楽しみ」とチームへの期待感を膨らませた鯉将。“新井流マネジメント”でのリーグ優勝へ、新戦力の台頭を心待ちにしたい。(デイリースポーツ広島担当・向 亮祐)
◆2023年の新井マジック 昨年の広島の最長連勝は「10」で、期間は7月12日・巨人戦から同27日・ヤクルト戦。連勝スタートは、同11日・巨人戦で4番だった西川が右わき腹痛で戦線離脱した試合からだった。連勝期間中の4番はデビットソンや松山だけでなく菊池や上本も起用。主力が欠けても、思い切った打順で攻撃のバリエーションを広げた采配が光った。なお昨年の先発打順パターンは117通りで、セ・リーグでは4番目に多い数字。