【野球】阪神・門別が高評価される理由 19歳左腕に岡田監督が「楽しみどころちゃうよ」と期待するワケ
取材現場の舞台裏を描く新企画「スポットライトの裏側」。今回は阪神・岡田監督が開幕ローテの一角として期待する門別啓人投手(19)について。高卒1年目の昨季に1軍デビューを果たし、23年秋季キャンプでは指揮官からMVPにも選ばれた左腕。評価を受けるポイントを探った。
門別を語る岡田監督は冗舌になる。「楽しみどころちゃうよ」。今春1軍キャンプ参加が確実となっている左腕。連覇へ向けて新戦力の台頭を期待する指揮官にとって、期待度はチームトップかもしれない。
門別は東海大札幌時代に甲子園出場経験はない。全国的には無名でもしなやかな腕の振りから投げる最速150キロの直球への評価は高く、22年度ドラフト2位で指名を受けた。
1年目はウエスタンで12試合に登板して2勝2敗、防御率2・78だった。チームがリーグ優勝した翌日の9月15日・広島戦(マツダ)で1軍デビューし、2番手で3回6安打3失点。同30日・同戦で初先発すると5回7安打無失点、無四球の好投を見せた。岡田監督は「『誰もいないから投げさそう』ではなくて、『投げさせたい』と思わせたからな。高卒1年目で大したもんや」と2軍首脳陣に認めさせた投球ぶりを評価した。
さらに評価を上げたのが、昨秋キャンプだった。第3クール初日の11日から岡田監督ら1軍首脳陣が合流。同時に投手陣には、同クールは直球だけを投げるように指示が出た。
投手にとって直球は生命線。原点を確認させる意味合いがある練習で、門別が存在感を示した。安藤投手コーチは「ベース板でぐんっと押せる感じがある。秋のメンバーでは一番強く感じたね。あの年齢であの球威は天性のものだろうね」。湯浅、西純ら1軍経験者に交じっても、球威は際立っていたという。
岡田監督は「今中みたいやな。肘が柔らかくてしなる。軽く投げてるようで、直球がピュッとくる」と、1993年に沢村賞を獲得した元中日のエース・今中慎二氏に重ねるほどだった。
下半身はどっしりとしており、体幹の強さを感じさせる。秋季キャンプのある日。投手陣はダッシュのスタートを切った後、マシンから空へ高く打ち上げられたボールを落下地点まで追いかけて、捕球する体力強化メニューを行っていた。
落下点を見誤ったり、落球したりする先輩もいる中、門別は何本走ってもフォームが乱れず、ほぼ落球しなかった。足を上げてぐいぐいと前に進む走りで、確実に落下点に入る姿にセンスの良さを感じさせた。強靱(きょうじん)な下半身と体幹の強さを生かしたフォームは再現性が高く、制球もいい。
指揮官が投手に求める要素も兼ね備えている。フィールディングの評価も高く、メンタルも強い。安藤コーチは「さすがにデビュー戦は『緊張しました』と言っていたけど、2戦目には『緊張しませんでした』って。人に迷惑をかけるようなマイペースではないけど、ひょうひょうとしているし、度胸があるよ」と19歳の強心臓ぶりに舌を巻く。
昨秋の安芸キャンプ。岡田監督がブルペンで捕手の後ろから投球を見ていたことを問われた若手投手たちは、緊張や意識したことを口にしていた。
ところが門別はあどけなさが残る表情で「特に…」と切り出し、「こっちに目線が来ている時にどれだけいいボールを投げられるかという感じでした」。おっとりとした性格を感じさせる受け答えながら、意志の強さを感じさせた。
岡田監督が「隠しときたい」とまで話した逸材。高卒2年目に大ブレークする可能性を秘めている。(デイリースポーツ野球担当デスク・西岡 誠)