【野球】甲子園がフル稼働でも日本一の球場として保てる理由 今年は27年ぶり年間2度のライブも準備万端

 取材現場の舞台裏を描く新企画「スポットライトの裏側」。今回は“神整備”の阪神園芸に迫る。今年、甲子園球場は開場100周年を迎え、阪神戦以外にもフル稼働の予定。オフから球場利用のスケジュールはぎっしりで、27年ぶりに年間2度の音楽ライブ開催も予定されているが、グラウンド状態を悪化させて猛虎のプレーに影響を及ばすわけにはいかない。“日本一の球場”をキープできる理由を、阪神園芸・金沢健児氏が明かした。

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 今月9日、甲子園のグラウンドの土が農作業用の耕運機で掘り起こされた。新春恒例の「掘り返し」と呼ばれる作業。シーズン開幕を最高のコンディションで迎えるための、最初の大事な工程だ。

 甲子園は黒土と砂が混ざったグラウンド。1年間使うと、細かい黒土が下に沈み、砂が上がってくる。程よい混ざり具合を維持できないと、黒土が固まりすぎて、水はけが悪化する。シーズン中にかくはんできるのは地面上部の1~2センチのみ。この時期だからこそ、30センチの深さまでかき混ぜることができる。

 「黒土と砂のバランスを整えると、吸水性が上がって、水はけが良くなります。毎年年明けに年1回、これをやっています」と金沢氏は説明。「グラウンドをキレイに生き返らせる」ための、この作業が年始にあるからこそ、毎年12月に甲子園ボウルのため、マウンドを完全に削ることも可能だという。1月上旬に耕したグラウンドは、2月末までの雨で締め固められる。

 「下の部分の不要な水が自然蒸発して抜け切らないと、グラウンドは仕上がらない。キャンプから帰ってきた3月のオープン戦の頃はまだ軟らかく、最高気温20度を超えるようなプロ野球開幕くらいになって出来上がります」。シーズンが始まる2カ月以上も前から、阪神園芸の“戦い”の火ぶたが切られる。

 近年シーズンオフの11月に年に1度、人気アーティストが甲子園ライブを開催してきた。メモリアルイヤーの今年は7月13日にTUBE、11月16日に東京スカパラダイスオーケストラがライブを予定。年間2度の甲子園ライブ開催は27年ぶりで、シーズン中の開催も8年ぶりとなる。

 「7月ですが(阪神が遠征で)5日間整備ができるように空けてもらえているので、土は戻せる。芝生は悪くなるとしても、ココとココという感じで想定し、人が通る導線も決めて。それでもアカンかったら張り替えも想定してます」。例年はオールスター休み期間に行う「掘り返し」の簡易版作業を、今年はTUBEライブ後に合わせて前倒しで実施。ライブ前の状態に戻すように計画する。

 “神整備”というフレーズも定着したが「それはタイガースと高校野球の人気が全て。その本拠地であり、高校野球の聖地を管理しているということで、そう言ってもらえる」と受け止める。「グラウンドの状態は今も昔も変わらず評価されるように、自分たちが受け継いできた技術を、次の100年へ受け継いでいくことがわれわれの使命」。阪神園芸の熱い矜持(きょうじ)が、これからも甲子園を日本一の球場に保ち続ける。(デイリースポーツ阪神担当・丸尾匠)

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