【野球】ヤクルト・石川 引き際の美学「ボロボロになるまで」44歳球界最年長 200勝まであと15
通算200勝まであと15勝に迫る、球界最年長のヤクルト・石川雅規投手(44)が語った「引き際の美学」に迫る。167センチの小柄な体格で打者を翻弄(ほんろう)し続け、昨季は入団1年目から22年連続で勝利を記録。長年に渡って投手陣を支えてきたケガ知らずのベテランにとって、心の支えがロッカールームにあった。
寒さが染みる神宮に、変わらない石川の姿がある。同級生は一人、また一人…とユニホームを脱ぎ、ついに最後の一人となった。今月22日には44歳の誕生日を迎えた。通算200勝という越えたい大きな壁に立ち向かい、物語の結末にはどんな姿を思い浮かべているのか-。迷いはなかった。
「今年が最後だと、毎試合このマウンドが最後かなと思って投げています。みんなそれぞれ引き際の形があると思うんですけど、こんなにも大好きな野球。僕はボロボロになるまでやりたい」
入団1年目から大きなケガもなく、常に主戦場は1軍の舞台だった。チームのエースとして君臨し続ける日々を支えた秘密は、ロッカールームにある。「ちょっと汚くなったからリニューアルしたよ」と笑うのは、30歳前に貼った元中日・山本昌氏の年度別成績表だった。石川にとって「最高のお手本」だという師。毎年アップデートしている自分自身の年度別成績表も真横に張り、50歳まで現役を続けた通算219勝左腕の成績と毎日のように見比べた。
「明確な目標がほしかったから。途中までは僕の方がちょっと勝っていたんですけど、今はだいぶ離されちゃいましたね」。横軸となる年齢で見る勝ち星の数を比較し、視覚で捉える目標は夢を色濃く、明確にした。何度も試合で投げ合うことで、そのすごみも痛感。「昌さんはこの年にこれだけやっているんだって勇気にもなるし、一歩でも近づきたいなと。表を見る度に思いますね」と原動力になっている。
厳しいプロの世界を生き抜いてきたからこそ、自らの成績からも目を背けない。「昨年は2勝で終わってしまったので…」。悔しさを糧に、今オフには断食も敢行。食生活にも注意を向け、体脂肪をグッと減らすなど引き締まった体で新年を迎えた。すでに何度もブルペン入りし、捕手を座らせた投球も開始。「グラウンドに出たら年齢や実績は関係ない。若手と勝負していきたい」と期する思いは誰よりも強い。
石川は「まさかここまで…ここまでユニホームを着られるなんて思ってもいなかったよ」と静かにつぶやく。年齢を重ねる度に増す球団への感謝の思いと、比例する貢献したいという熱量。「昌さんはただ長くやるだけではなくて、きちんと成績も残されてきた。僕も数字という結果を出さないといけない」。覚悟が自然と言葉になった。
通算200勝まで残り15勝と、迫る大記録への旅路がある。石川は「その目標があるから体も動くと思うんだよね。どんな結果になったとしても、僕の中ではチャレンジすることが大事だから」とし、「僕は往生際が悪いんですよ。一番いいのは試合中に『痛』って言って投げられなくなるのが分かりやすいかなと思います。それくらいまでやりたい」と笑う。貫きたい野球選手としての生きざまに、大きな夢を重ね合わせた。(デイリースポーツ・ヤクルト担当・松井美里)
◆石川 雅規(いしかわ・まさのり)1980年1月22日生まれ、44歳。秋田県出身。167センチ、73キロ。左投げ左打ち。投手。秋田商から青学大を経て、2001年度ドラフト自由枠でヤクルト入団。プロ1年目の02年4月4日・広島戦(神宮)で初登板初先発初勝利。最優秀防御率・ゴールデングラブ賞(いずれも08年)、新人王(02年)。00年シドニー五輪日本代表。