【プロレス】棚橋弘至 異例の二刀流新日本“社長レスラー” 目指す野望「疲れない僕なら両立できる」
プロレスラーの棚橋弘至(47)が昨年末、新日本プロレスの社長に就任してから1カ月が過ぎた。創業者のアントニオ猪木、坂口征二、藤波辰爾に続く4人目の現役レスラー社長として、時間のやりくりに腐心しつつ、リング上と慣れないオフィスワークに奮戦する二刀流の日々を送る棚橋は、社長として、現役レスラーとして、何を目指すのか。
棚橋社長の出勤は週5日、定時の午前10時から午後6時までで、シリーズの空き日も出勤する。業務は決裁、取締役会、部署ごとの会議などで、社員面談も始めた。「どう活動しているか知らないと評価できない。仕事内容の把握は一番大事なこと」と説明する。
練習は勤務の前後に1時間半ずつ、ウエートトレーニングと有酸素運動、ストレッチ。「朝特有のテンションの低さを無理やり上げないといけないし、デスクワーク後のプロレスとは違う疲労感をリセットしてモチベーションを上げないといけない。練習に取り組むまでのハードルが高まりましたね」と苦笑する。
棚橋は今も2つの王座を保持する主力選手だ。以前から社長への意欲はあったが、なぜ今、木谷高明オーナーからの就任要請を受諾したのかを聞くと、エースの内藤哲也がいて新世代も頭角を現していることと、自身が「IWGP世界ヘビー級王座(の挑戦)になかなかいけない状況」が理由だと説明した。
コロナ前の2019年に54億円という史上最高売り上げを記録するも、コロナ禍で業績が悪化した現状を「本当に悔しかった」と思い、残るキャリアを「もう一回新日本を盛り上げることに使いきってもいいという思いがあった矢先」の要請。
「まだまだ世界ヘビーを狙いたかったので、葛藤があって即返事ができなかった」が、「疲れたことがない」を自負してきた棚橋は「悩んだんですけど、疲れない僕なら両立できるんじゃないかと。両立されてきた先人がいるので、やってやろうかなという気になっていきました」という。
社長としての経営目標は「コロナ前の過去最高売り上げ超え」だ。新たな戦略としては「今年はアジアを攻めたい」と明かす。4月には台湾大会を予定しており、米英進出の再開に加え、アジア市場の開拓を目指す。
リング内では昨年末からオカダ・カズチカ、ウィル・オスプレイら主力の離脱が相次ぐが「全然心配してない」という。実際に若い世代が途切れなく育っており、強がりではない。「常に道場に若手がいる、プロレス団体として最も健全な状態にいます」と胸を張る。
リングでは2・11大阪大会でオカダとの一騎打ちという大一番が待つ。大阪は2012年2月12日、オカダにIWGPヘビー級王座を奪われた因縁の地だ。「オカダの物語ではなく、完全に棚橋の物語として。レインメーカーショックが起きた大阪でリベンジを果たして、あの時の続きが見られたら」と心に期す。
自身の選手としての今後については「今でもIWGP世界ヘビーに挑戦して勝つと思っているから現役でいる。チャンピオンでいるためにはフル参戦してコンディションを作ってという条件を満たさなければならない。無理だと思ったら、たぶん引くんじゃないか」と打ち明けた。
中邑真輔、柴田勝頼、オカダ・カズチカと好敵手を見送り、自身は新日本一筋の棚橋。「実家を守っていく長男坊」は選手として、社長として、業界の盟主をさらなる高みへと押し上げる。
◆棚橋弘至(たなはし・ひろし)1976年11月13日生まれ、岐阜県出身。立命館大法学部卒。99年デビュー。新日本プロレスをエースとして再建した立役者で、日本マット界を代表するプロレスラーの一人。IWGPヘビー級王座8回、G1クライマックス優勝3回、プロレス大賞MVP4回。必殺技はハイフライフロー。決めゼリフは「愛してま~す!」。愛称は「100年に一人の逸材」。身長181センチ、体重101キロ。血液型O。