【野球】ヤクルト投手陣に可視化革命 ブルペンに「伊藤工務店」が“新兵器”納入 狙いは課題の制球力改善
浦添キャンプ初日のブルペンに設置されたお手製のストライクゾーン。投手陣の復活で覇権奪還を誓うチームへ可視化のススメだ。高津臣吾監督(55)、伊藤智仁投手コーチ(53)、選手らの証言から謎をひも解く。
投手陣がしのぎを削り合うブルペンに、特製の“新兵器”が誕生した。ポールとゴムひもで作られた手作りのストライクゾーン。実はこれ、高津監督から要望された伊藤投手コーチが沖縄県内のホームセンターで材料集め。「伊藤工務店」と名付けられたお手製の代物だった。
強い日差しが降り注ぐ浦添のブルペン。キャンプ初日に突如表れたストライクゾーンに選手も興味津々だった。真っ先にブルペンに入った石川は「どうせならやってみたい」と挑戦。高低や内外のコースをより意識できるブルペンに「ひもがあることによって投げやすさというか、狙いやすさがある。練習段階の基礎という意味ではすごくいい」と意図を明確にした練習にうなずいた。
高津監督が「ただ投げるのではなくて、何かのヒントになれば」とキャンプ前に伊藤コーチに要望。指揮官も現役時代にコーンを置くなどの似たような練習に取り組んだ経験があるといい、令和版にブラッシュアップ。まだ1カ所しかないが、今後は「伊藤工務店の力次第」と増えていく可能性も示唆した。
覇権奪還を目指し、積極的に動き出した。「ノーモア故障者」を掲げ、中でも投手陣の復活&底上げはチームにとって急務の課題だ。昨季のチーム防御率はリーグワーストの3・66。382四球はリーグトップの阪神より67個数多く、63死球はリーグワースト2位と制球力にも課題が残った。伊藤コーチは「まずはストライクゾーンを把握する。あとは狙いどころですね」と狙いを説明した。
ゴムひもは動かすことが可能で、選手によっても、取り組んでいる球種によっても専用のストライクゾーンに“変身”することができる。「その球は横を狙うのか、縦を狙うのか。目標を作りたかった」と言い、「そこに狙って投げましょう、その結果どうなったのかを整理して次に投げればいい。それで分かってくれたらいい」と、継続することでより効果的な改善が実現することに期待し、「ストライクに投げてくれたらいいから」とまとめた。
「所要時間は約15分で、かかった経費は5600円」と明かした伊藤コーチ。また「キャッチャーが見にくそうだから」と今後はゴムひもを細く改良するなど、伊藤工務店の仕事はさらに増え続ける予定だ。
すでに体験した清水は「すぐに答えが出る。投げ始めは明確に分かるのでいい」とし、「ひとつ落とし穴だと思うのは、バッターボックスの平面でしか見ていないので、あとは奥行きが大事。そこへの切り替えも必要になる」とうなずいた。投手陣全体で目指す巻き返し。「反撃開始」のGO令は、浦添のブルペンから始まっている。(デイリースポーツ・ヤクルト担当 松井美里)