【野球】与死球から読み解くセ・リーグ各球団の投手力特性
春季キャンプの第1クールが終わった。練習内容を俯瞰(ふかん)すれば、各球団の抱える課題が見えてきて興味深い。
例えば昨年、阪神に3連覇を阻まれたヤクルトは、村上、塩見ら昨シーズン思うような活躍ができなかった野手陣の復調が待たれる一方で、チーム防御率3・66とセ・リーグ最下位だった投手陣の再建も急がれる。
キャンプ地・浦添のブルペンには、伊藤投手コーチ手製という、ゴム紐で作られたストライクゾーンがホームベース上に据えられた。狙いはもちろん、各投手の制球力アップだ。
一つの指標として、与死球の数値に注目してみた。ここ数年の傾向として、セ・リーグでは巨人が5年連続でトップ。
ちなみに2019年から58、59、56、65、64個という数字だ。
ヤクルトはここ3年、リーグ3位(50個)、同2位(59個)、同2位(63個)と巨人に迫っている。
死球の特性として、強打者に厳しい内角攻めを施せばどうしても増えてくることが考えられる。本塁打の出やすい球場であればなおさらだろう。
昨年の、各フランチャイズ球場で相手チームに許した本塁打は以下の通り。
神宮70試合中、77本。1試合平均1・1本。
東京ドーム65試合中、49本。同0・75本。
マツダ、横浜、バンテリンの各球場は平均0・6本あたりでそろっている。
甲子園は62試合中、28本。1試合平均0・45本とダントツに少ない。
やはり巨人、ヤクルトの投手陣に死球が多いことは、心境的にも理解できる。
ちなみに阪神の与死球も42個とリーグ最少。投手陣の制球力と、本塁打の出づらい甲子園という環境の後押しもあっての好成績と言える。
自軍の本塁打も出やすい一方、手痛い一発も食らいやすい神宮と東京ドーム。与死球は当該打者に本塁打されずとも、無条件で出塁を許すため傷口を広げる危険性をはらむ。
ヤクルト・伊藤コーチ発案の練習法が実を結ぶかどうか。“当てずとも抑えられる”制球力が備われば、V奪回に一歩近づくことは間違いない。