【野球】阪神・佐藤輝の特守に、改めて元広島・衣笠祥雄さんの鉄人ぶりがよみがえる

 三塁線のゴロ捕を繰り返す佐藤輝(撮影・田中太一)
 連続出場の世界新記録を達成し、ファンの歓声に応える衣笠祥雄(1987年6月13日)
 日本シリーズ・近鉄戦に出場した衣笠祥雄(1979年10月27日)
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 今も元祖鉄人の姿は色あせない。阪神・佐藤輝明(24)の三塁守備練習に、改めて故衣笠祥雄さんの鉄人ぶりが思い起こされてならない。

 沖縄・宜野座キャンプに参加中の佐藤は6日、臨時コーチとして招かれた球団OBの鳥谷敬氏(42)から三塁守備を指導されたという。通常の守備練習に加え、特守を含め一日合計で290本ものノックを受けるなど、さすがにそのタフネスぶりは一級品だ。

 運動能力は、筋力だけでなく運動神経や反射神経、視覚、聴覚の感覚器官などで構成されている。これらは10代半ばから急激に上昇し、20代前半にピークを迎えるといわれている。24歳の佐藤は、まさにその時期に差しかかろうとしている。このまま守備練習にも注力していけば、三塁守備も向上の一途をたどることは間違いない。

 仮に年齢を重ねて運動能力が落ちていったとしても、野球に取り組む姿勢さえ忘れなければまだまだカバーできると思う。それを証明してくれたのが、NPBで2人目となる国民栄誉賞を受賞し、2018年4月に亡くなった衣笠さんだった。

 元阪神監督の金本知憲氏(55)や鳥谷氏も鉄人と呼ばれることが多い。だが、鉄人の元祖は間違いなく衣笠さんだと思っている。それを目の当たりにしたのが1986年、宮崎・日南で行われていたキャンプ第1クールの最終日、2月16日のことだ。当時、広島のキャンプは12球団一長く、ハードだと言われていた。その日の全メニュー終了後、この年から指揮を執る阿南準郎監督(86)が衣笠さんに「この日を待っていたんだ。納得いくまでやるぞ」と突然合図しノック地獄がスタートした。長年、守備走塁コーチとして働いていた阿南監督はノックの名手だった。その阿南監督が右へ左へ、そして前や後ろに捕れるか捕れないかギリギリの球を打ち、衣笠さんを走らせること約30分、数にして175本の特守を行ったのだ。

 ノックに費やした時間、その数もさることながら驚かされたのは、当時の衣笠さんの年齢である。なんと選手として最晩年ともいえる39歳。その大ベテランが、終了後は「さすがに疲れたよ」といいながらも口笛を吹き、平然と野球道具を担ぎ球場を後にする姿をあぜんと見送ったことを覚えている。

 キャンプ前に選手が行う体力測定でも、衣笠さんに驚かされていた。詳しい数値までは教えてもらえなかったが、球団関係者からウエートトレーニングの種目の一つで、握力を高めことができるピンチ・グリップ(pinch grip)の数値が、体力測定に参加した全選手の中でも最上位に位置している、と聞いたからだ。衣笠さんに、この件で取材を試みたが「そんなこと俺は知らんよ」とあしらわれた記憶があるが、その数値だけが突出していたわけではなかったらしい。その他に測定した項目の数値もほとんどが20代の選手と遜色がなかったという。

 プロ野球12球団の春季キャンプもヤマ場に差しかかり、特打や特守の話題を聞くことが多くなっている。それを耳にするにつけて、元祖鉄人の姿が思い出されてならない。(デイリースポーツ・今野良彦)

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