【野球】阪神・梅野の約束 1軍キャンプ地の名物飲食店「パーラーぎのざ」の女性店主を支えた言葉とは 今年で21周年
阪神の1軍キャンプが行われている「バイトするならエントリー宜野座スタジアム」横にある飲食店「パーラーぎのざ」は今年で21周年を迎える。店主の新里玲奈さんは宜野座の人たちや阪神の選手を温かく見守り、ともに歩んできた。その道のりやコロナ禍の苦悩、苦しい時期を救ってくれた梅野からの、ある言葉も明かした。
たくさんの種類の弁当や選手の名前がついた商品がずらっと並び、お客さんでにぎわう店先。今年で21周年を迎える「パーラーぎのざ」は虎党にもなじみ深い“名物店”だ。阪神のイメージが強い同店だが、きっかけは偶然だった。
「阪神とは関係なくて。このあたりはコンビニすらなかったので需要あるかなと思って始めました」と新里さん。許可が下り、営業を開始したのが2003年。くしくも、阪神も宜野座で春季キャンプをスタートさせたのが同年だった。
父が計画した店だったが、新里さんが切り盛りすることに。右も左も分からない状態で「3カ月でつぶれるだろう」と初めは笑われることもあった。それでも周囲の人からノウハウを教えてもらいながら、徐々にお店を軌道に乗せていった。
キャンプ期間以外でもほぼ年中営業をしている。普段は宜野座高の野球部が練習を行ったり、少年野球の大会などが開かれたりと、子どもたちと触れ合うことが多い。「少年野球から上がって行く過程を見ているから、子どもみたいなもの」と新里さん。「卒業しても顔出しに来てくれる。彼女できたら見せにくる子もいる」と母親のように温かく見守っている。
元々は野球も阪神も全く興味なかったという。目の前でやっているキャンプも見始めたのは2、3年前。ただ、キャンプ期間や自主トレ期間で選手が買いに来ることもあり、言葉を交わすことも多い。選手名のついたメニューも販売しているが「選手たちの人柄にほれただけ」と応援の意味で作成しているという。苦しい時期も、その「人柄」に救われた。
新型コロナの影響で2021年の春季キャンプは無観客開催。休業を決断した。もちろん収入はゼロで閉店も考えた。ただ、その時に梅野からかけられた言葉が胸に響いた。「日本一プレゼントするから、お店閉めないで」。その一言でお店の継続を決断。「彼の言葉でどうにか頑張れた」と新里さんは感謝の気持ちを口にした。そして昨年、本当に日本一を達成。新里さんは5月に初めて甲子園での阪神戦を観戦したことも明かし、「本当にありがとう」と悲願達成を喜んだ。
毎年沖縄で自主トレを行っている梅野とは、店先で野球のことからプライベートのことまで、たわいのない会話を交わす。梅野も「自主トレで10年近くお世話になってるから、毎回昼(ご飯)も助けてもらってるし。自主トレとキャンプで縁がある大事なお店。今やってくれてるのはめちゃくちゃうれしいし、常に声をかけてくれるし、すごく力になる」と感謝。続けて、「お店も大好きだし人柄も大好きなので、長いこと元気でやってくれることが一番。俺らも元気で活躍するところを見てもらいたい」と願った。
長年店を守ってきた新里さん。ただ、こだわりについては「何もない。縁がある人を応援したいだけ」という。続けて、「自分の年齢より下の人が多いから息子みたいな感覚。活躍してくれたらうれしい」と思いを明かし、連覇を願った。今年で店は22年目を迎える。「あっという間だった。自分もともに成長させてもらった」。これからも多くの人たちの胃袋と心を満たし、笑顔の輪を広げていく。(デイリースポーツ・山村菜々子)