【野球】選手から飛ぶヤジ 広島に異例の30歳1軍コーチがなぜ誕生したのか 今季12球団で最年少 自身も「まさか」の驚き
まだ風格はない。その代わり、フレッシュさは誰にも負けていない。昨季限りで現役を引退し、今季から“新井政権”入りを果たした広島の三好匠1軍内野守備走塁コーチ(30)。なんと言っても特筆すべきは30歳という年齢だ。今季の12球団で最年少1軍コーチはなぜ誕生したのか。周囲のサポートにも迫った。
外野ノックで内野に飛球がぼとりと落ちると、左翼の守備位置に就く選手たちから“ヤジ”が飛んだ。「お~い!三好コーチィ~」。ノックバットを握る三好コーチは苦笑いで悔しげな表情を浮かべた。「ノックは難しいです。外野に大きいのを打ちたいですけど、内野にいったりとかあるので。まあ練習ですね」。新米コーチらしく、選手とともに汗を流している。
2019年途中にトレードで楽天から加入。昨秋に球団から戦力外通告を受けた。まだ30歳で体も動く。現役続行の道を模索することもできたが、「楽天でも、その年にクビかなと感じていて、カープにトレードで拾ってもらった。カープでクビになれば、もう現役はいいかなと思っていた。現役に未練はなかったんです」と打ち明ける。
球団からは職員としての残留を提示された中、ふたを開けてみれば役職は1軍のコーチ。近年のプロ野球で30歳での1軍コーチ就任は異例とも言える。広島では過去に朝山東洋現1軍打撃コーチが29歳でコーチに就任したが、当時は3軍野手コーチ。三好コーチ自身も「まさか1軍コーチとは思わなかったです」と驚きがあったという。
指導する内野手には菊池、田中、堂林など年上の選手もいる。藤井ヘッドは三好コーチに対して、「年上の選手には俺から言うようにしようか?」と提案。しかし、三好コーチはそれを固辞した。「年上の人にも自分の意見はしっかり言えるようにはしています。そこは若い選手と同じようにバリバリやってもらいたい」と決意は固い。
34歳の田中は「ミヨがやりたいようにやってもらえれば良いですし、そこで僕たちに気を使うこともない。やりたいようにやって、僕らが困った時に助けてあげられるように」とサポートを約束。新井監督からも「自分の思うようにやってみて」と声をかけられているという。
選手と年齢が近いことが最大の持ち味。三好コーチ自身も「選手に近いのが1番の取り柄。監督や他のコーチに言えないことだったり、小さいことでもなんでもいいので、僕に言ってくれたらいいなと思います。他の人にできないことをやっていきたい」と心得る。
25歳の矢野は「ミヨさんが去年まで現役で食事に連れて行ってくれたことも何回もありますし、いろんな話もできるので、関わりやすい。今までにない感覚」と話した。昨季のチーム失策数は82でリーグ5位だった。堅守のカープ復活へ30歳の新米コーチに期待がかかっている。(デイリースポーツ・広島担当・畠山賢大)
◇三好 匠(みよし・たくみ)1993年6月7日生まれ、30歳。福岡県出身。174センチ、84キロ。現役時代は右投げ右打ちの内野手。九州国際大学付から11年度ドラフト3位で楽天入団。19年にトレードで広島移籍。23年に現役を引退し、24年から広島の1軍内野守備・走塁コーチに。現役通算378試合で打率・188、6本塁打、28打点。