【野球】なぜエース格の阪神・青柳が対外試合初戦に先発するのか 2年前の投手3冠右腕の今年にかける思いとは
阪神・青柳晃洋投手が今年初の対外試合となる17日の楽天との練習試合に先発する。一般的に1軍キャンプに抜てきされた若手投手、実績の少ない投手が先発することが多く、実際に3年前は2年目の西純、2年前は3年目の及川、昨年は2年目の桐敷が務めているのだが、なぜ今年は9年目を迎えるエース格が対外試合初戦に先発するのだろうか。
2021年に13勝、勝率・684で投手2冠。翌22年には13勝、防御率2・05、勝率・765で投手3冠に輝いた。だが、チームが18年ぶりのリーグ優勝を果たした昨季は8勝6敗、防御率4・57と数字を落とし、シーズン半ばには2軍落ちも経験した。
リーグ優勝から日本一を経た今オフ。青柳を評する記事には『復活』の文字がつきまとうことが多い。確かに昨年は不調の時期が長かったが、2年連続で最多勝を獲得した実績までも取っ払われてしまったような印象があり、青柳もそこに少なからずの不信感を抱いている。
「1年でエースが移り変わるのは、ちょっと納得いかない部分もありますね」と笑いながらも、「エース復活とか言われますけど、たった1年悪かっただけ。じゃあ今年良かったら、何て呼ぶんだ?という気持ちでいます」と偽らざる胸中を明かしている。
信賞必罰の世界。昨年の不振を認めるからこそ、今年にかける思いは強く、それが対外試合初戦先発という形となって表れている。
阪神OBの中田氏は「今年の青柳はエゲつないボール投げてるよ。右足にしっかり体重が乗ってるから、ベースのところでボールが強い。伸びも勢いもあるし、その手応えが表情に出てる。自信に満ちてる。キャンプ中に本人とも話したけど、今年は最多勝争いすると思うよ」と2年ぶり3度目のタイトル奪取を信じて疑わない。
今年初登板を翌日に控えた16日、青柳はブルペンで51球を投げ込んだ。
「打者が立ったり、緊張感があったり、いろいろ条件が変われば、ここでやってきたことができなくなることも多い。ブルペンでやっていることをそのまま持っていけたらいい」と、心と頭の中で設定したテーマを確認しつつ、任された1イニングを味わう心積もりだ。
チームメートの村上、岡留らと行った合同自主トレでは、自らがタイトルを獲得するまでに教わったこと、勝利をつかむ中で体得した知識、打者を抑えるテクニックなど、多岐にわたって惜しみなく伝えた。
昨年のリーグ優勝を経て、世間は阪神のエースをMVPの村上、移籍1年目に12勝を挙げた大竹と見る向きもあるが、青柳は言う。「僕は何と呼ばれようが良い。僕は僕なんで。終わったときに周りが『エース』と言ってくれるようなピッチャーを目指して頑張りますという感じなので」。静かな口調に穏やかな表情。だが、内心は激しく燃えている。(デイリースポーツ・鈴木健一)