【サッカー】未来へ引き継がれる伝統の一戦 横浜M・松永成立氏 宿敵と戦うJ開幕戦へ「ヴェルディが上がってくれたことは感慨深い」

 かつて“ナショナルダービー”とうたわれた黄金カードが復活する今季のJリーグ開幕戦、東京V-横浜M(25日・国立競技場)。時代が移り変わり両チームの意識も変化した中で、93年5月15日の同カードによるJリーグ開幕戦の舞台に立った横浜M・松永成立GKコーチ(61)が、未来へ引き継がれる伝統の一戦への思いを語った。

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 その一戦からJリーグの歴史は始まった。93年5月15日、Jリーグ開幕戦となったV川崎(当時)対横浜M(国立)。満員のサポーターで埋まったスタンド、華やかなセレモニー。31年前の光景を松永コーチは今も鮮明に覚えている。

 「(プロ化前の)日本リーグの頃は、国立でも観客が500人ぐらいの中でやっていた人間なので。ウオーミングアップをやりながら涙を流した。そんなこと後にも先にも、その時だけだった」

 日本リーグ(JSL)時代から、しのぎを削り日本サッカー界をけん引してきた日産と読売。そのライバル対決でプロリーグが産声を上げ、J草創期のまさに“ナショナルダービー”として人気を博す。ただ、ヴェルディの低迷とともにその熱は薄れ、08年を最後に長らくJ1の舞台で両者の対決は実現しなかった。

 今や選手の意識も変化している。東京Vにユースから在籍していたMF渡辺皓も「ユース同士の対戦ではライバル意識があったが、トップに上がってからは(マリノスは)遠すぎてあまり意識できないようになっていた。一つ上の存在と感じていた」と振り返った。

 ただ、松永コーチは「ヴェルディがJ1に上がってくれたことは個人的にすごく感慨深い。開幕戦をヴェルディとやらせていただけるのは、いろんな意味でうれしい」とした。一方で現在のJリーグに「良い言い方をすれば安定している。ただ、選手の質をキープして試合のレベルを上げていかないと、これ以上のお客さんは集まらない」と危機感ものぞかせる。

 だからこそ、松永コーチは黄金カード復活がJリーグ人気を高める一助となることを願う。今は両者のライバル意識こそないが「(水沼)貴史さんや(木村)和司さん、金田さんとか、僕よりもっともっと昔から苦労された方がいて93年の開幕戦があったと思う。それから31年たって僕が偉そうに(当時を)しゃべっていられるのも、そうした人たちが僕に教えてくれたものがあるから。そういう思いを後進へ伝えていけたら」と話す。

 その引き継がれた魂をピッチで示せるのは、今の選手たちだけだ。「新しい歴史を築いていってほしい。それがJリーグの発展につながっていく。そういう道を今の選手には歩んでいってほしい」。新たな両者の対決が熱く盛り上がれば、オールドファンには懐かしく、今のファンには新鮮に刻まれるだろう。2024年2月25日が、かつての“ナショナルダービー”の輝きを取り戻す一歩となることを期待したい。(デイリースポーツ・中田康博)

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