【野球】巨人 オコエの全力カバーリングで思い出した黄金期の強さ 阿部監督が「徹底」させる野球「普通にやるのが一番難しい」
「オープン戦、広島1-10巨人」(24日、コザしんきんスタジアム)
オープン戦2試合連続の大勝をマークした中、さりげないオコエのプレーに目を奪われた。広島・久保が放った平凡なレフトフライ。プロならばまず“落とさない打球”だが、中堅から全力疾走でカバーに走った。
左翼・萩尾が丁寧に捕球する傍らで芝生に膝をつき、いつ落球してもいいように待ち構えていたオコエ。アウトが宣告されると、さっそうと中堅の守備位置へ戻っていった。この日、コザしんきんスタジアムは風が強かったが、それを抜きにしても、巨人の今年の実戦を見ていると丁寧なカバーリングが目立つ。
阿部新監督が就任し「普通にやるというのが一番難しいことで。当たり前の、捕れるアウトを一個取れなかったりとか。そういうのは野球ですごく致命的になるので。そういうところ、出ているみんなが感じてやってもらいたいなと思います」。オープン戦初戦を終えた後、指揮官はこう語っていた。そして「徹底」という言葉もよく目にする。オコエのカバーリングはチームの意識が変わりつつある証拠と言えるシーンだ。
チームが原監督の下で生まれ変わった2007、08年に巨人を担当した。その後も、阪神担当として巨人の野球を見てきたが、強かった時は本当に隙を見せなかった。2014年にキャンプを見に行った際、投内連係を見ると一つ一つのプレーは淡々とこなしていたような印象がありつつ、グラウンドにはミスできないピリッとした空気が張り詰めていた。
長野が「いい空気で練習やってるでしょ?おそらく誰が試合に出ても、このチームは勝つと思うんです」と語っていたのを今でも覚えている。当時の大黒柱は現役時代の阿部監督。だがチームは大きな柱に頼ることなく、それぞれが高いレベルでワンプレー、ワンプレーに取り組んでいた。その印象を原監督に伝えると「そうかい?」と言い、「やっぱりね、束になったチームというのが目指すところ」という答えが返ってきた。
全員が同じ方向を向き、同じ意志を持って143試合を戦う。誰が試合に出てもチームの向かうべき道筋は変わらない。決して派手さはない“不気味な強さ”でもあり、それを生み出すのは強固な「組織力」と感じさせられた時期もあった。
阿部監督は広島戦後、9点リードの九回2死一塁の状況でベースにつき、牽制球を受けようとしていた秋広に苦言を呈した。本来ならベースを離れ、打球を処理することに専念すべき状況だった。大勝の中でも細かいところに目を配り、「大ケガをするおそれがある」と失敗の芽を摘んだ指揮官。その高い意識が徹底したカバーリングにも表れているように映る。
大勝の中でも光ったワンシーン、そして阿部監督の指摘。2年連続Bクラスからの巻き返しへ、興味深いと思わされる内容だった。(デイリースポーツ・重松健三)