【野球】なぜ巨人・阿部監督は2日連続で秋広に苦言を呈したのか あえて試合直後に厳しい言葉を向ける意味

 「オープン戦、広島1-10巨人」(24日、コザしんきんスタジアム)

 オープン戦連勝発進にも、厳しい言葉が新指揮官の口を突く。勝つに越したことはないが内容も大切。シーズン本番をにらめば看過できないポイントだとし、あえてマスコミの前で苦言を呈す方策を選んだ。2年連続Bクラスから4年ぶりのリーグ優勝を目指す巨人・阿部監督だ。

 開幕戦の前哨戦となった23日・阪神戦の初回に7得点。三回に阪神・佐藤輝に2ランを浴びて7-3で迎えた三回1死。初回に適時二塁打を放っていた秋広が初球を打って出て左飛に倒れた。阿部監督は試合後、「1本打って満足しちゃったのか。ホームランを打たれた次の回の初球をポンポーンと打ち上げて。ああいうのはちょっと野球知らないんじゃないかと思います」と厳しい言葉を向けた。

 この回の先頭は秋広ではなく大城卓で、カウント3-2からの6球目を二ゴロ。1死から打席に入った秋広は伊藤将の131キロのツーシームを捉え切れず左飛に倒れたのだが、阿部監督は大城卓の凡打ではなく、秋広のアウトの成り方が気になった。

 初球のフライアウト。ストライクが来たからと漠然と打ちにいったのではないか、狙い球だったのか、キャンプから続けているスイングはできていたのか…。アウトの意味を秋広に問いかけた。

 24日の広島戦では、9点リードの八回にセーフティーバントの構えを見せた湯浅と、九回2死一塁でベースに張り付いて投手のけん制を待ち、ベース後方に守備位置を取らなかった一塁・秋広の判断の甘さを指摘した。

 「今日もね、2人ほどプロ野球を知らない選手がいたんだよね。自軍が大ケガをする恐れがある。10対1でセーフティーの構えとかしたりね。10対1で、九回2アウトランナー一塁で後ろに行かなかったりね、ファーストがね。そういうところでね、ベンチの指示待ちじゃなくてできるようになってほしいな」と野球脳に深みを求めた。

 各部門のコーチを介したり、球場や宿舎でのミーティングなどで改善点を伝える方法もある中、阿部監督は試合直後に生中継されている状況もいとわず、自らの思いを言葉に変えている。

 特に秋広に関しては、オフのイベントや球団行事に2度ほど遅刻したこともあり、1月下旬のキャンプメンバー発表の際には「最初は3軍にしようかなと思った」と話し、続けて「技術がうまくなるのって難しいから、人としての成長を監視しています」と語っていた。

 阪神OBの中田良弘氏は「阿部監督のコメントを見ていると、これは秋広に対する期待の裏返しだよね。もっともっと成長できる選手だと思ってるからこそ、あえて厳しい言葉を投げかけているんだと思うよ」と解説した。

 ただ、阿部監督は厳しい指摘だけでなく、評価に値するプレー、結果を残した選手に対して、しっかりと称賛の言葉を残している。

 中田氏は「阿部監督にはこのスタイルを変えずにやり続けてもらいたい。褒めるにしろ、怒るにしろ、疑問をぶつけるにしろ、早い段階で監督が言葉にするのは大きな意味があると思う。もしかしたら、誰かに『このやり方はおかしいんじゃない?』って言われることがあるかもしれないけど、自分のやり方、進み方を貫いてほしいね」と要望した。

 巨人には盟主としての伝統があり、プライドもある。昨年までは原監督が3度にわたって通算17年間、チームを率いており、少なからず前任者の“色”がチームに残っている可能性がある。だが、阿部監督は個としても集団としても強くなるため、勝つために自分の色を塗り重ねる。19年の現役生活を終えた後、ユニホームを脱がずに指導者としてチームを見守り、身を粉にしてきた。第20代巨人軍監督。真っ白なキャンバスにどんな筆圧で、どんな絵を描いていくのだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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