【野球】技巧派へのモデルチェンジ 楽天・田中将はパワー系投手が席巻する日本球界に一石を投じることができるか

 技巧派へのモデルチェンジで楽天・田中将大(35)は、パワー系投手が席巻する日本球界に一石を投じることができるのか。

 昨年10月に右肘のクリーニング手術を受けた田中将が、残り3勝に迫った日米通算200勝に向けて調整を重ねている。24日に行われた中日とのオープン戦(Agreスタジアム北谷)では、今季の実戦初登板初先発で1回を2安打無失点。真っすぐは最速141キロ止まりだったが、開幕までの時間を考えればまずまず順調にきているだろう。

 ヤンキースを退団し、楽天に復帰した2021年以降は渡米前の無双を誇った時代に比べ、成績的には苦しいシーズンが続いている。200勝達成は時間の問題と思われたが、ここ3シーズンで挙げた勝ち星はわずか20勝(32敗)。昨季の防御率は規定投球回数に到達したパ・リーグ投手ではワーストの4・91に終わっている。

 私が駆け出し記者だった昭和の終わりから平成の初めごろは、球場のスピードガン表示で150キロを超すストレートを投げる投手は元巨人の江川卓氏(68)や中日の小松辰雄氏(64)、炎のストッパーと呼ばれた故津田恒実氏ぐらいだった。そんな時代に故伊良部秀輝氏の投じた160キロに迫るボールを目の当たりにしたときには、正直度肝を抜かれたものだ。

 だが、近年は160キロ台を計測するスピードボールを投げるロッテ・佐々木朗希(22)を筆頭にセ、パ・リーグともに軽く150キロを超すストレートを投げるパワー系投手は何人も存在している。今春季キャンプでも、早い段階から直球が150キロをはるかに超す投手が続出しており、たいした話題にもならない時代になっている。

 田中将は以前、150キロ台の剛球とスプリットなどの落ちるボールを駆使して勝ち星を積み上げてきた。ところが、日本球界復帰以降は明らかに真っすぐが走らなくなっており、ピッチングのモデルチェンジに取り組まなくてはいけない時期に差しかかっている。15年ぶりに、振りかぶるワインドアップ投法に取り組んでいるのもそのためだろう。

 ワインドアップ投法は振りかぶる反動を利用して投げるため、球威が増しやすいというメリットがあるが、逆にバランスを崩しやすく、コントロールが乱れやすいというデメリットもある。だが、田中将は日米を股にかけた百戦錬磨の投手。最大の武器であるスプリットやスライダーといった変化球は現役投手の中でも十分に一級品だ。ワインドアップ投法に取り組んで過去のイメージから完全に脱却し、技巧派投手にスムーズに移行できる可能性は十分だ。

 今季は守護神・松井裕樹(28)がパドレスに移籍したことで、則本昴大(33)がその座に就く。必然的に先発投手の駒が不足する可能性も出てくるだけに、田中将にかかるウエートは間違いなく増していく。パワー系投手が球界のトレンドになりつつある今、華麗なる変身を遂げ、新たな田中将像を作り上げてほしいものである。(デイリースポーツ・今野良彦)

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