【野球】かつて城島健司氏が語った座り投げの極意「肩や腕の力は必要ない」新庄監督も驚いた巨人・山瀬のビッグスロー

 「練習試合、巨人5-3日本ハム」(27日、沖縄セルラースタジアム那覇)

 思わずテレビを見ていて驚いた。七回1死一、二塁の場面。巨人の山瀬慎之助捕手が座ったまま二塁へノーバウンドのけん制球を投じた。

 二塁走者の日本ハム・水谷も帰塁する際に思わず苦笑いを浮かべ、新庄監督も「すごいキャッチャー」と絶賛した。山瀬も「どんどん一つの持ち味としてやっていけたら」と語ったが、思い出したのが阪神担当時代に取材した城島健司氏の姿だ。

 おそらく座って二塁へ送球したのを試合で見たのは城島氏以来じゃないか-。2010年シーズン、マリナーズから阪神へ移籍してきたスーパーキャッチャーの姿に思いを巡らせた。「技術を見せるのがプロ野球選手の商売。記者はその技術を理解して伝えないといけない」。必死で練習段階から一挙手一投足を追い、色んなことを教えてもらった。その一つが座り投げの極意だ。

 当時、デイリースポーツの企画で野球少年の質問に答えるコーナーがあった。そこで座ったまま二塁に投げる秘けつを聞いた記録が残っていた。大前提の一文に「このプレーは肩の強さをアピールしているわけではない。僕はプロ野球の捕手の中で遠投競争をやっても1位にはなれない。座って投げるために、肩や腕の力はそこまで必要ない」というコメントが記されていた。

 そして大事なのは「下半身の使い方」-。城島氏は「通常、立って投げる際の原理から説明していくと、ボールを受ける瞬間に右足をその場で踏む。普通の野手は左足をまず踏み出して、右足、左足とステップしていく。ただ捕手は二塁送球の際、前方に打者がいるので、前に出て勢いをつけることができない。また捕ってから投げるまでの時間を短縮するために、右足を踏んで下半身にパワーをためる」と丁寧に解説してもらった。

 その上で「意識するのは股関節。ここでしっかりとパワーをためて、体幹を通ってから肩や腕に力を伝える」。いつ頃から座り投げをしていたかの問いには「実際に座って投げ始めたのは小学生のころ。その時から座りながら、二塁へビュンビュン投げていた。試合で投げる投げないは別にして、座った状態のまま股関節で生み出した力を腕に伝えるトレーニングはやった方がいい。座って投げることで、その重要性が理解できると思う。決して肩、腕の力だけでボールは二塁へ届かない。しっかり股関節を使うことを意識しながら、チャレンジしてみて」とメッセージを送っていた。

 城島氏が2012年に現役を引退した際、鳴尾浜で行われた引退試合で座ったままの二塁スローを見せた。当時、右肘はトミー・ジョン手術が必要と言われていたほどボロボロの状態だったが、「野球人の血が騒いだ」と美しい軌道で二塁へ届いたシーンは今も目に焼き付いている。

 「もう釣り竿も持てない(笑)」と笑っていたスーパーキャッチャーの姿。この日、巨人の山瀬が見せてくれた1球のけん制球が、城島氏に聞いた大切な言葉を思い起こさせた。(デイリースポーツ・重松健三)

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