【野球】新天地ヤクルトで定位置奪取に挑む西川遥輝の覚悟 昨年楽天から戦力外通告 恩師・栗山氏の熱い言葉

 2年ぶりの覇権奪還を目指す高津ヤクルト。その中に新天地でもうひと花咲かせようと、人一倍強い「覚悟」という特別な思いを持って臨む西川遥輝外野手(31)がいる。日本ハムをノンテンダーFAとなり、昨年には楽天から戦力外通告を受けた。3球団目となったスピードスターの“現在地”とは-。

  ◇  ◇

 浦添の太陽に照らされた1カ月間、西川は「野球ができる喜び」に満ちていた。若手選手らと共に汗を流し、同じ時間を共有する道を選択。「いつ辞めても後悔しない野球人生を送りたいと思っているんで」。これまで積み重ねてきた数々の実績は全て度外視した。泥くさく、貪欲に。ひたむきな姿が印象的だった。

 昨年10月に楽天から戦力外通告を受けた。「覚悟していた」と“終わり”を受け止めるのに時間はかからなかった。すぐさま新天地を探そうと行動を開始。だが「このタイミングまで」、「ここまでだな」…。自身で課した期日は伸びる一方で、「今回は(どの球団からも)連絡がなかったので。待っている時間は不安でした」と苦しかった日々を思い返した。

 「ほんとに、どこもなかったら…。野球を離れるかもしれん」。考えたくない現実も、確かに脳裏をよぎった。だが、そんな時は「何かあるって信じて練習しました」と気持ちを奮い立たせた。運命に導かれるかのようにヤクルトに新天地が決まると、縁に感謝した。

 日本ハム&楽天時代に指導を受けた三木肇氏(現楽天2軍監督)、日本ハム時代にコーチだった城石憲之氏(現ヤクルト2軍総合コーチ)、日本ハム時代の恩師・栗山英樹氏(現日本ハムCBO)がかつて在籍したチームということもあり、「ヤクルトがいい球団なのは聞いていたから、素直にうれしかった」。栗山氏に入団が決まったことを電話で報告すると、自分のことのように喜んでくれた。監督に勝利を届けたいと、グラウンドを縦横無尽に駆け回ったあの時のように、熱い言葉で背中を押された。

 「ヤクルトはいい球団だから、遥輝が輝けるように頑張れ」-。

 キャンプでは室内練習場で連日打ち込みを行い、内野での特守も受けた。さらには1軍では10年ぶりとなる右翼での出場も見据え、練習に最も多くの時間を割いた。2月24日の阪神戦で初安打を放ち、2日の中日戦では初盗塁も記録。レギュラー奪取へ順調にきているかに思われたが、西川は「練習も良くないから少し不安なんですよね」とつぶやく。

 「しっくりきていない」と悩むのは打撃フォームだった。量に特化した序盤から、徐々に質へ重きを変化していく過程で、「いろいろ技術面とか考え出して、より実戦に向けてってなってきたらよくないですね」とギリギリまで試行錯誤を重ねていく。開幕まで1カ月を切った。生き残りをかけた戦いに、安堵(あんど)する時間はない。

 「僕はもうオープン戦で結果を残して、試合に出られるようにしないといけないので。ずっと打ち続けないといけないですね」。崖っぷちから、何度もはい上がってきた野球人生。今年の目標は143試合の「完走」だ。恩返しは、スタートラインに立つことから始まる。(デイリースポーツ・ヤクルト担当・松井美里)

 ◇西川 遥輝(にしかわ・はるき)1992年4月16日生まれ、31歳。和歌山県出身。181センチ、82キロ。右投げ左打ち。外野手。智弁和歌山から2010年度ドラフト2位で日本ハム入団。盗塁王4回(14、17、18、21年)。ゴールデングラブ賞4回(17~20年)。21年オフ、楽天に移籍。昨年、楽天から戦力外通告を受ける。

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