【野球】巨人 電撃トレードの背景 阿部監督が郡拓也を欲した理由「捕手2・5人」体制がチームに生む相乗効果
巨人・若林晃弘内野手(30)と、日本ハム・郡拓也捕手(25)の交換トレードが成立し、両球団が11日に発表した。
若林、郡ともに内外野を守れるユーティリティープレーヤー。若林は両打ちの打撃も魅力で、郡は昨季、ファームで内外野全ポジションを守るなど、マルチな活躍を武器にする25歳だ。
ただ、はた目には「似たタイプの選手同士」の交換トレード。なぜ…?の声も聞こえてくるが、巨人・阿部慎之助監督(44)はメリットを強調。チーム内に生まれる相乗効果に期待している。
「彼が入れば捕手を2人にすることもできる。そうすれば投手を入れたりもできるしね。彼1人で助けられる部分があると思う。チームにとっては大きいと思うよ」
現行制度で1軍選手の登録人数は31人。ベンチ入りは26人に限られる。「感染症特例」が適用されているとはいえ、長いシーズンを戦う中で選手の入れ替えなど、チーム編成が大きなカギを握る。その中で通常、捕手は3人体制だが有事に備え、なかなか最後のカードは出せない。
ここに郡がハマればチームとして、困った時の選択肢が増える。空いた枠を「プラス1」として、リリーフ投手や野手の切り札…さらに期待する若手の経験枠など、多岐にわたる用途が期待できる。また現在、巨人で支配下登録されている捕手は5人。昨季は捕手での出場は2試合のみだが、有事も含め、チームにとっては貴重な存在となる。
指揮官が2軍監督時代に対戦し、注目を置いていた選手の1人でもあった。捕手「2・5人」体制が生み出す相乗効果。「足も速いしね」と評価するように代打、代走、8ポジションの守備固めと、1人10役の超万能型選手が加わることで、チームのより激しい活性化が期待できるはずだ。
「どこでもできる人同士のトレードだったから、どこでもやってもらうよ。いいトレードになればいいね。お互い、2軍にいた選手が1軍に呼ばれるんだからさ。両方にとって、いいトレードだったと言えると思うよ」
郡は近日中に入団会見を開き、13日のオープン戦、ソフトバンク戦(ペイペイドーム)から1軍に合流予定。阿部監督はチーム方針や信条などをまとめた小冊子を選手、スタッフに配布しているが、「献身性」も重視。勝利のために自己犠牲を払える選手への評価を口にする。捕手を含め、全ポジションを守る郡の献身性は、阿部監督の求めるタイプにもハマる。
阿部監督は昨年10月の監督就任後、ソフトバンクと1対2のトレードで、先発候補の高橋礼とリリーフの泉を獲得。さらにオリックスからは、金銭トレードでリリーフの近藤を迎え入れた。今回が監督として3件目のトレード成立。チーム内の活性化だけではなく、補強ポイントを適材適所で埋めている。開幕を目前に控えた中で、徐々に阿部野球の骨格が見えてきた。(デイリースポーツ・田中政行)