【野球】なぜ?首位打者を狙う阪神・中野が今、フルスイングに挑戦する理由とは 意識を変えたWBC戦士からのヒント
阪神の中野拓夢内野手(27)が打撃のレベルアップに取り組んでいる。昨季は最多安打のタイトルを獲得し、今季は首位打者を目標に掲げる巧打者がミート力アップではなく、フルスイングを継続。プロに入って初めての挑戦の狙いと、日本球界屈指の巧打者から得たヒントとは-。
とにかくバットを強く振る。そして、思い切って引っ張る。大きなフォロースルーは長距離打者のようだ。中野が今年の実戦でこれまでのイメージとは一変したスイングを繰り返している。
オフから首位打者を目指すことを公言。打率を上げるならミート力を向上させる方が近道で、フルスイングは相反する取り組みに見えるが…。プロ入り後、初めてという挑戦には明確な狙いがあった。
「合わせたスイングならコンタクト率は上がるけど、強く振った中でのコンタクト率を上げていけば、打率3割を狙えたり、ヒット数がもっと増えたりすると思うので」
昨季は最多安打のタイトルを獲得。プロ3年間で通算448安打を放った。これまでの経験でバットコントロールは通用する手応えはつかんだ。
一方でヒット狙いの合わせるスイングには限界も感じていた。「常にそういう打ち方をしていると、どんどん引っ張れなくなって強い打球が打てなくなる」。内野の間を抜けそうなゴロが捕られて、飛球は外野手の頭上を越えずに失速。「そういう打球がヒットになるかで全然違う」。打球の強さや速さの重要性を感じることが多々あった。
フルスイングを継続する上で打撃を微調整した。もともとバットをインサイドアウトの軌道で出し、広角に打ち分けるスイングが持ち味。基本は崩さず、体の使い方に変化を加えた。
「しっかり上半身と下半身と連動させて、バットのヘッドを気持ち遅らせて出すようなイメージで強く振っています。遅れてムチのようにバットが出てくる感じです」
ソフトバンク・近藤からの言葉もヒントになった。「WBCと今回(3月)の日本代表へ行っていろいろと話す機会があったんです。『手だけで打つより、体を連動させて打った方が逆方向に強い打球がいく』と言われて」。プロ12年で通算打率・306の巧打者からの助言も参考に試行錯誤を繰り返している。
オープン戦は打率・120。今は挑戦の過程であり、現状を不安視していない。「逆方向に合わせて打つというのは正直、自分の中ではいつでもできるかなと思っているので」。いつでも元のスタイルに戻せるという。
現時点でシーズンでもフルスイングを継続するかは未定。残り8試合のオープン戦で今季のスタイルを決めていく。「しっくりくるか、こないかで変わってくる。使えるなら状況に応じて、強いスイングや、合わせにいくスイングを使い分けられれば」。仮に昨季までの打撃に戻したとしても、現状に満足しない姿勢は今後の進化への糧となるはずだ。(デイリースポーツ・西岡誠)