【野球】なぜ筒香嘉智はDeNA復帰を選んだのか?基本合意と思われた巨人からの大どんでん返し
DeNAは16日、米大リーグ・ジャイアンツからFAとなっていた筒香嘉智外野手(32)の獲得を午後2時25分に発表した。これは筒香の愛称でもある「225(つつごう)」にちなんだ粋な発表時間で、5年ぶりの古巣復帰となったが、なぜ筒香はNPBの複数球団が獲得に名乗りを上げた中、古巣への復帰を選んだのか。
近年まれに見る大どんでん返しだったのではないだろうか。一部スポーツ紙が巨人獲得決定的と報じた8日時点、私も同じ情報を得ていた。巨人・阿部監督は7日のDeNA戦後、「調査はして頂いてるみたい。僕が言えるのは、ここまでかな」と語った後、「選手としては実績十分だし、人間性も素晴らしいですからね」と獲得への意欲を強く示していた。
その時点で巨人が提示した条件は、どの球団より高かったと伝わっている。新外国人のオドーアが電撃退団し、開幕戦でダイビングキャッチ&2ランと活躍した梶谷が左膝の違和感で抹消となり、丸も7日のDeNA戦で右太もも裏を痛め、一時期出場を見合わせるなど、外野の戦力が不足していた。
一方、筒香サイドは条件よりも、出場機会があるのかどうか、多いのか少ないのかを判断のポイントのひとつにしていたと聞く。DeNAの外野を見渡せば、度会、佐野、関根、桑原とそろっており、一塁もオースティンが10日の中日戦で故障するまでは、1試合を除いて先発出場しており、筒香が割って入る余地は少なかった。
最終的な判断の背景に、オースティンが右太もも裏の肉離れを発症し、長期離脱が確実となったことが含まれている可能性もあるが、球界関係者は「別の理由もあったのでは」と語った。
別の理由とは、巨人決定的との報道が流れた後の世論だ。「DeNAファンを中心とした、なんで巨人なんだ!という強烈な逆風が吹きました。ちょっと想像以上の。このまま巨人に移籍してしまうと、筒香選手がすごい悪者扱いされる可能性があった」と語るほどのバッシングがSNSを中心に飛び交っていた。
獲得に乗り出した各球団関係者の間では「巨人と基本合意したようだ」との認識が持たれており、「早ければ11日にも筒香選手が阿部監督に『お世話になります』という連絡を入れそうだ」との情報も駆け巡っていた。
巨人は筒香サイドの要望に応じるスタイルで交渉を進めてきたが、条件を上積みしたDeNAは最終的に2年目までは年俸3億円、3年目は変動制の3年契約(推定)を提示するなど、古巣としての最大限の熱意を含めた“奥の手”を駆使して恋人を振り向かせた。
筒香サイドは15日に巨人に断りの連絡を入れた際、「総合的に考えて」と理由を告げたという。18日に横浜スタジアムで入団会見が開かれるが、近年まれに見る大どんでん返しになったと思われる交渉過程、自らの心境の変化、揺れ動いた思い、最終的な決め手となった部分についてなど、どこまで核心に触れるのだろうか。(デイリースポーツ・鈴木健一)