【野球】MVP右腕の阪神・村上が「真っスラ」を取り戻せた理由とは 「去年の感覚に戻ってきている」
阪神の村上頌樹投手(25)が昨季、MVP&最優秀防御率のタイトルを獲得する要因となった球が「真っスラ」だった。浮き上がるような軌道で、打者の手元でナチュラルにスライドする直球。だが、今季の開幕直後は本来の軌道ではなかった。“復活”への過程とは-。
◇ ◇
16日の巨人戦後。村上は「ストレートの感覚が良い感じになってきてきている」と手応えを口にした。開幕から3試合目。昨季のMVP右腕が明るい表情を見せた。
ここまで1勝1敗、防御率1・06。数字だけを見れば上々の滑り出しだ。だが、開幕直後は代名詞の「真っスラ」で空振りを取れず、ファウルにされる場面が目立った。相手に研究され、配球や打者の待ち球も関係するとはいえ、直球で打ち取ることに苦労する姿に違和感を覚えた。
今季初登板の2日・DeNAは3回5失点。初回2死満塁は山本を3球で追い込んだ後、150キロ超の直球を2度ファウルにされ、9球目の152キロを右中間への3点二塁打とされた。同戦での直球22球のうち、空振りは投手のジャクソンの1球だけ。7球のボール球に次いだのが、6球のファウルだった。
続く9日・広島戦は7回無失点で今季初勝利。ただ、52球を投じた直球の内容は17球のファウルが最も多く、空振りは3球だった。初回無死の野間、二回無死の堂林はそれぞれ3球、四回無死は矢野に4球も直球をファウルにされ、結果まで10球前後を要した。23人のうち直球で打ち取ったのは9人だった。
セ・リーグのある球団スコアラーは「今年の最初は直球にシュート成分が多かったから打者が対応できたと思う。去年はものすごい滑り方をしていて『今のカットボール?』と思って、球速を見たら『直球だったんだ』というぐらい球威も球速あったので」。スライドする直球が逆回転していたことが一因だった。
昨季は巨人・岡本和らを驚かせた軌道を描く確率が減少。村上も自覚していた。「悪い球は指にしっかり掛かっていなかったので、シュートしていました。今まではそれが多かった」。時間をかけて、ズレを修正。「去年の感覚を思い出しながら、1からという感じでやり直していました」。フォームから見直した。
5日の練習ではキャッチボールを2度行った。以降の練習でもキャッチボール後に、外野で再びブルペン捕手に直球だけを投じる姿もあった。「投げ急いでいた、というのがあるので。(始動後に)しっかり立たずに前に流れて、突っ込んで投げるという感じだったので。しっかり足から(投げる)っていうことを意識しています」。軸足となる右足にしっかりと体重を乗せてから、体の開きを抑えた投球を繰り返した。
時間をかけた結果、3度目の登板となった16日・巨人戦では好感触を得た。直球57球でファウルは16球あったのものの、坂本、門脇、佐々木らから5つの空振りを奪った。打者27人のうち15人を直球で打ち取り、うち5人が見逃し三振だった。「指にしっかり掛かって良い感覚の直球だった。去年の感覚に戻ってきている」。映像などでは分からない小さな変化だが、村上にとってはきっかけとなる登板だった。
投球の軸となる直球は最も重要とする球種。「自分としてはあの真っすぐをただ伸ばしたい。曲がってもいいから垂れるんじゃなくて『伸びる真っスラ』というか、そんなふうになってくれればと思っています」。理想を追い求め、23日・DeNA戦(横浜)で4度目の登板に臨む。(デイリースポーツ・西岡誠)