【スポーツ】女子ソフトボールJDリーグに異色の事務局長が誕生 つば九郎を手がけた加藤謙次郎氏が新たな挑戦を選んだ理由

 3年目の開幕を迎えた女子ソフトボール「ニトリJDリーグ」。今年4月、リーグの事務局長に加藤謙次郎氏(44)が就任した。プロ野球・ヤクルトでつば九郎のプロモーションを手がけ、野球日本代表「侍ジャパン」でも人気アニメとのコラボなどでブランド力向上に努めた加藤氏が、JDリーグの幅広い周知へ考える“仕掛け”とは-。

 4月12日に開幕したJDリーグ。現段階の観客動員は「今のところは順調です」と加藤氏。だが「まだ認知度が低い。普通にやっていては週末の(観戦への)選択肢に入ってこない。まず、頭の片隅に入れもらうところを一番にやらないと」と課題を口にした。

 異色の経歴を持つ加藤事務局長。だが、スポーツにおけるプロデュース業では、スペシャリストと言える。東急電鉄の広報から野球界に転じたのは2007年。きっかけは04年に近鉄の身売りから発生した球界再編問題だ。

 「当時は業界他社の記事を社長室に届けるのが仕事。で、近鉄が(オリックスと)合併すると。野球はどうなるんだろうと思った」。再編騒動の中で目に留まったのは、新球団・楽天に採用された職員の経歴だった。

 「金融やコンサル、いろんな業界から入っている。いろんな人が集まる業界ならばチャレンジしても…と思った」。その後、ヤクルトの職員募集に応募。広報として野球界へ足を踏み入れた。

 ヤクルトで当時人気が出始めたマスコット・つば九郎の企画を手がけ、スケッチブック筆談や今や恒例の契約更改などで人気爆発の一翼を担う。

 14年に日本野球機構(NPB)に出向した。常設化されて間もない「侍ジャパン」のブランディングに注力。人気アニメ「おそ松さん」「僕のヒーローアカデミア」とのコラボで野球ファン以外への認知度拡大に貢献した。

 独立起業後にはサッカーJ1湘南で営業の仕事にも挑戦。「ヤクルトなどで広報業を、湘南で営業を学び、そこがかけ算できるようになった」と、多様な経験を積んだ22年6月に発足したばかりのJDリーグから誘いを受ける。それ以前にリーグ開幕戦を見て可能性を感じていた加藤氏は、このオファーを受諾した。

 「チームや代表には関わったが、リーグの仕事は初めてで興味があった」と説明。そして「試合を見ると、選手たちが笑顔を絶やさずプレーしている。女子ソフトボールの一番の魅力。そこを伝えていきたい」と話す。

 今年のスローガンは「推しの子」ならぬ「推しのソ」。16チーム各3人を選出した「JDL48」を結成し、上野由岐子らスター選手以外に、特徴あるスター候補を売り出していく。選手を出身地域ごとにチームの垣根を越えたユニットを組み、地域を“推し”ていく取り組みも行う予定だ。

 女子プロサッカー・WEリーグなど、他競技との連携やコラボを模索中で、競技の枠をも超えていく考えを持っている。

 「ソフトボールを知らない人はいないし、体育の授業にもある。五輪でも多くの人が見ている。ただ、生活の中に入って来ていない。そこをつなげる作業を地道にやれば、良い成功例が出てくるんじゃないかと思う」

 28年のロサンゼルス五輪では競技が復活する。だが「五輪にとらわれない、独自の魅力をつくることが大事」と加藤氏。日常にソフトボールを-。その理念が成就した時に、女子ソフトボールの未来はまばゆく照らされる。(デイリースポーツ・中田康博)

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