【スポーツ】横浜Mと障がい者サッカーの関わり「サッカーができるから生きていけると言ってくれて」20年以上紡がれてきた歴史
4月20、21日の両日に神奈川県立スポーツセンターで「Powered by JATCO 横浜F・マリノスカップ 第19回電動車椅子サッカー大会」が開催された。J1横浜Mが障がい者スポーツの理解度や関心度向上などを目的とした大会は、迫力あるぶつかり合いが展開される熱戦の末、決勝でYokohama CrackersがFCクラッシャーズを下して優勝を果たした。
横浜Mと障がい者サッカーの関わりは20年以上にも及ぶ。「障害者スポーツ文化センター横浜ラポール」との協力も得て04年にJリーグ初の知的障がい者サッカーチーム「横浜F・マリノスフトゥーロ」を立ち上げ。電動車いすサッカーの大会として始めた「F・マリノス杯」もコロナ禍の中断時期もあったが、今年で19回目を迎えている。
「障がい者への地域貢献、社会貢献が20年以上前にはまだまだ少なかった。時代が追いついてきたなというところを感じる」。そう話すのは一般社団法人F・マリノススポーツクラブ理事を務める望月選氏(61)だ。
今では障がい者サッカーへの普及の輪は広がってきている。「F・マリノス杯」もジヤトコ株式会社などの協賛を得て、ジヤトコから40人のボランティアが参加。これまで選手の家族などが行っていた、競技時に車いすへ装備する「フットガード」の取り付けを行ってもらえるなど大会での環境も充実してきている。
誰もがスポーツに出会い、夢と未来を創出する-。横浜Mの取り組みにはクラブの理念が凝縮されている。望月氏は「われわれは健常者と同じように彼らと付き合っている。アスリートとして見て行きましょうと」と説明した。特別視するのではなく生活の中で普通にスポーツと出会い、打ち込めるのが理想型だ。
電動車いすサッカーは重度の障害のある選手も多い。「去年出場した方が亡くなっていたりということもある」と望月氏。だからこそ「サッカーができるから生きていける、苦しいけど生きていけるんだということも言ってくれて…。そこはどんどん後押しをしていきたい」と障がい者スポーツの存在意義を語った。
現在では車いすサッカーのW杯もあり、昨年はオーストラリアで第4回大会が開催。日本も出場した。世界ではパラリンピックへの種目入りを目指す活動も続いている。
「パラリンピックの競技になることは難しいが、もっと脚光を浴びさせてあげたいと思っている。そういう障害があってもサッカーができるんだと知ってもらいたい」
競技レベルも年々向上し望月氏も「戦術や技術も上がっている。本当に毎年楽しみ」と話す。Yokohama Crackersの主将・永岡真理さんは「チームや個々の技術など課題はたくさん出た。来年に向けてまたしっかり練習していきたい」とさらなる向上を目標に掲げた。
そして「練習も大変だったけど、周りで支えてくれる方のおかげでここまで来られた。優勝できたことはうれしいし、感謝したい」とも-。
「Jリーグのチームだからできることもある。そこは引き続きやっていきたい」と望月氏は意欲を示す。障がい者が日常的にサッカーを楽しむための環境作りは課題も多い。ただ、横浜Mが続けてきた活動は、彼らの日常を少しずつ前へと進めている。そう感じた。(デイリースポーツ・中田康博)
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