【ゴルフ】「ISPSハンダ欧州・日本トーナメント」一転し継続へ 唯一のゴルフ日欧共催ツアーをなくしてはいけない理由
男子ゴルフの欧州と日本の共催ツアー「ISPSハンダ欧州・日本トーナメント」が4月25日から4日間、静岡県御殿場市で開催され、ホストプロの桂川有人(25)が優勝し、2026年までの欧州ツアー出場権を獲得した。特別協賛の国際スポーツ振興協会(ISPS)・半田晴久会長(73)は、白紙としていた来年度以降の大会を一転して継続する意向を示した。取材を通して見た、日欧共催を継続するメリットとは。
唯一の日欧共催トーナメントが来年度も継続に前向きと伝え聞いて、ホッとした。特別協賛で大会の冠名となっているISPSの半田会長が、22年からのタイトルスポンサー3年契約の最終年に「(来年以降は)このままではやりません」と白紙を示していたが、大会後に方針を転換したからだ。
なぜ半田会長は大会を継続する意向を示したのか。それは最終日に日本ゴルフツアー機構(JGTO)の倉本昌弘氏と話し合い「男子ゴルフの若者が羽ばたけるような、総合的なサポートをやっていこう」という考えを共有したからである。JGTOは3月に諸星裕氏が新会長に就任。欧州ツアーもキース・ペリー氏が会長を退任するとあって、大会前は新体制の日欧両ツアーと接触する機会に恵まれなかった。
選手側の立場から見ると、この大会をなくしてしまうのはあまりにももったいなかった。日本と共催し、国内で行われる海外男子ツアーには、10月の日米共催のZOZOチャンピオンシップもあるが、日本勢の出場枠は10人程度と少ない。対してISPSハンダ欧州・日本トーナメントは日本ツアーから50人近くが出場。優勝で海外ツアーのシードを獲得するという点では、世界への門戸が圧倒的に広い。
それだけに、選手の目の色が違った。ツアー未勝利ながら2日目に首位に立った松山英樹の弟分・佐藤大平は「チャンスじゃないですか。日本の知っているコースで。海外は行ってみたい。駄目になっても良いので」。ツアー2勝で、アジアンツアーにも積極的に参戦する木下稜介は「こういう試合を続けてほしい」と話していた。他にも多くの選手が強い海外志向を口にする。
日本から欧州へ、その先には世界最高峰の舞台にもつながっている。昨年は久常涼が有資格者を除くポイントランキング上位10人の資格で、今季の米ツアーメンバー入りを果たした。さらに2月には星野陸也、3月には中島啓太が欧州で初優勝して同ランキングの上位に。今や欧州経由が米ツアーへの“王道ルート”になりつつある。
また、世界レベルを体感できる貴重な機会だ。なじみある日本のトーナメントコースでも、欧州ツアーのコースセッティングを交えると印象が大きく違う。狙いどころを誤れば大ピンチに陥る厳しいピン位置に、石川遼は「打ってはいけないところへ打たずに、1球でチャンスを作れるかというテストを感じるし、世界の傾向を見てもそういう位置が多い」と話す。
世界の名プレーヤーが集う、国外を主戦場とする日本勢の姿を見られるなど、同大会のメリットは他にもいくつかある。なくしてしまうのは簡単だが、日本の男子ゴルフ発展のためには日欧共催は末永く続いてほしい。(デイリースポーツ・中谷大志)