【野球】DeNA-阪神 大激戦の最中にスポーツの魅力が詰まったワンシーン 山崎が死球をぶつけた大山を気遣う 大山も紳士的対応
「DeNA11-9阪神」(11日、横浜スタジアム)
まさに大激戦だった。阪神が三回までに9-2と7点リードを奪った中、DeNAが八回に1イニング3発を放って大逆転勝利。横浜スタジアムが熱狂する中、スポーツマンシップを体現した2選手の行動があった。
八回表1死一塁。DeNA・山崎が阪神・大山に投じた直球系のボールがすっぽ抜けた。あわや頭部死球かという危険な1球だったが、大山はすぐに体をすくめた。ボールは左肩付近を直撃し、打席内で激しく転倒。直後、横浜スタジアムからは大ブーイングがわき起こると同時に悲鳴が交錯するなど一時騒然となった。
マウンドで思わず表情をゆがめた山崎。それでも大山はすぐに立ち上がった。「大丈夫ですか?」と気遣う山本を手で制し、問題がないことを強調。怒りをにじませることもなく、つけていた防具を外し始めた。
そして一塁へ向かおうとする際、今度はマウンドの山崎が大山に向かって声をかけた。中継映像で口の動きを確認すると「大山、ごめん」と申し訳なさそうに言っているのがわかった。
大山もジェスチャーで大丈夫であることを伝え、一塁ベースへと向かった。スタンドが騒然となっていた中、お互いがお互いを気遣う姿勢を見せた2人。清清しい行動だった。
野球というスポーツで死球は避けては通れない。強打者になればなるほどインサイドを攻められる。投手も同様だ。内角球を投げて少しでも踏み込みを甘くすることが、長打の回避にもつながる。お互いが生活をかけて戦うプロ野球。ギリギリの勝負でコントロールミスはありえる。
それでも山崎は申し訳なさそうな表情を浮かべて大山に声をかけ、大山も痛みがあったはずの中で、怒りをにじませることはなかった。そして相手に気を遣わせないほどのき然とした対応を見せた。
直後、山崎は佐藤輝を併殺に仕留めてピンチを脱出。気迫を前面に出すと、その裏、蝦名の同点2ラン、筒香の決勝ソロ、牧のダメ押し弾と1イニング3発が飛び出した。ヒーローインタビューで筒香は「康晃が鼓舞する姿を見て僕も思うところがありました」と八回のピンチを脱出したことで気持ちが奮い立たされたことを明かした。
DeNAにとっては打線の爆発力を見せた大逆転勝利。一方で敗れた阪神にとっては悔しい結果になった。白熱したゲームの中、山崎と大山の姿はスポーツの魅力、野球の魅力が伝わってくるワンシーンだった。(デイリースポーツ・重松健三)