【野球】援護がないという言い訳は 時空を超えてよみがえる投げる哲学者・今永昇太の言葉

 「援護がないという言い訳は防御率0点台の投手だけがいえる」。これは投げる哲学者、カブス・今永昇太(30)が残した名言だが、今回の登板でそれを思い出した。

 今永は14日のブレーブス戦(トゥルイスト・パーク)に先発。制球にやや苦しんだが、5回98球を投げて7安打8三振3四球無失点の好投を演じた。勝敗こそつかなかったが、試合終了時点での防御率はメジャー30球団1位の0・96まで下げた。

 防御率は投手の自責点を1試合相当(9イニング)で表す数字だ。自責点×9÷投球回で計算され、自責点が少ないほど低い数値になるため、数値が低いほど成績が優れている。

 防御率0点台は驚異的な数字だ。過去、日本では防御率0点台でシーズンを終えたのは故藤本英雄氏(巨人)が1943年に記録した0・73を最高に計11人しかいない。長い間、プロ野球記者として取材してきたが、防御率0点台を記録した投手に実際に会ったのは阪神担当時代の故村山実監督しかいない。まさに、レジェンド級に記録である。

 今永が先の言葉を残したのはドラフト1位で入団した2016年、ルーキーイヤーのことだった。開幕から先発ローテーションに入ったが、打線の援護に恵まれない試合が続いた。開幕から5試合の先発登板で4試合のクオリティー・スタート(6回以上を投げかつ3自責点以内)を達成したものの4連敗。4敗目を喫した阪神戦(甲子園)では14三振を奪いながらの敗戦投手になった。結局、シーズンを通じて防御率は2・93だったが勝ち星は伸びず8勝9敗と2桁勝利には届かなかった。

 勝ち星を挙げるのは打線の援護は必要不可欠だ。だが、今永は嘆くことなく発したのが先の言葉だったといわれている。「投げる哲学者」と呼ばれる今永の出発点となった名言だろう。

 今季、戦いの場をMLBに移して開幕から無傷の5連勝。6連勝すれば楽天の石井一久取締役シニアデレクター(当時ドジャース)=(50)=、現楽天の田中将大(当時ヤンキース)=(35)=に並ぶ日本人選手最長の開幕6連勝を飾るところまできている。まだ、メジャーのシーズンは序盤だがこのままの投球が続けば、日本人初のサイ・ヤング賞投手となることも夢ではない。

 前回登板のパドレス戦(8日・リグリー・フィールド)では7回2失点。防御率は1点を超えたが、今回の投球で防御率は再び0点台に突入した。それでも今永は「援護がない」という言葉を飲み込み、マウンドに立ち続けるに違いない。(デイリースポーツ・今野良彦)

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