【サッカー】J1川崎の礎を作った風間八宏氏は、なぜ関東リーグ1部の監督に就任したのか 名将を惹き付けた南葛SCの魅力

 今季からサッカー関東リーグ1部の南葛SCの新監督に、J1川崎や名古屋でも指揮を執った風間八宏氏(62)が就任した。川崎がJのトップクラブへ駆け上がる礎を築いた名将が、実質的には“5部”リーグに位置する南葛SCに対して感じた魅力とは何だったのか。風間監督にオファーを受けた理由や今後の理想などを聞いた。

 5月5日。今季の本拠地開幕となる桐蔭横浜大戦は、「葛飾劇場」と呼ぶにふさわしい熱戦となった。南葛SCは同点の後半47分にMF奥原の決勝弾で勝利。クラブ史上最多2055人を集めた場内が歓声に包まれた。

 劇的勝利に風間監督も「この試合を見たら(ファンが)また来たくなるよね。でも、これは計算していないから」と笑みがこぼれる。風間監督の「魅せるサッカー」、その一端が垣間見えた。

 昨年11月に風間監督は南葛SCの監督およびテクニカルダイレクターに就任。所属の関東1部はJリーグ、JFLより下の実質“5部”リーグ。川崎では「止める・蹴る」に始まる“風間メソッド”をたたき込み黄金時代の礎を築いた。その風間氏の南葛監督就任は驚きを持って伝えられた。

 なぜオファーを受けたのか-。「新しいものに挑戦する、独自の形を作りたいということ。そのベースに『キャプテン翼』という形がある。ボールは友達。そこが全てで見ていても楽しいし、やっている人たちも楽しい。何部リーグじゃなく、ここでいろんなものが作れるなっていうことを感じた」。それが理由だ。

 風間監督の新しいもの、面白いものを作りたいという飽くなき探究心と、南葛が描く未来図が重なったからこそ実現した夢のタッグ。鍵は、やはり「キャプテン翼」だ。

 葛飾区出身で漫画「キャプテン翼」を生んだ漫画家・高橋陽一氏がクラブの代表を務める南葛SC。風間監督も「やっぱり高橋先生のキャプテン翼をベースに、あのアニメはみんなを感動させることができる、そういうもの作りたいんだっていう。それがやっぱり一番大きな要因だと思う」とクラブの魅力を語る。

 「キャプテン翼」は世代も国境も超える“共通言語”。「孫も好きなわけよ。(普通は)三代続けて同じアニメの話はできないでしょ?これはすごいなと思う」と話す。

 そして「俺や子供たちもドイツでずっと見ていた。横(世界)と縦(世代)が両方つながるアニメはすごくいい」と世界への道もイメージしやすい。就任前から海外での活動計画も進めてきたという風間監督は「いろんなものを抱えて作っている最中。全てが一致しないとオファーを受けられなかった」と説明した。

 何より大きいのはクラブに携わる人々の熱量だ。「全員が自立している。クラブに寄りかかっている人は1人もいない。選手も、すごくプロの集団だと思う」と評する。

 一方で、葛飾区が新スタジアム建設へJR新小岩駅近くの用地を取得するなど地元の熱量も高い。「面白いものを作ろうということをみんなも望んでくれている。キャプテン翼や寅さんや、独自のものが重なってるパワーを持ってる町なんで非常に楽しい」と話した。

 Jリーグはまだ遠い目標。ただ、夢を夢で終わらせない説得力を感じるのも事実だ。「勝っても負けても応援すること、見ることが楽しい、自然に人が喜べる場所ができたらと思うし、作れると思っている」。ボールは友達。集うすべての人が笑顔になれる夢のクラブを、楽しみに待ちたい。(デイリースポーツ・中田康博)

 ◆風間八宏(かざま・やひろ)1961年10月16日生まれ。静岡県出身。清水市立商業から筑波大を経て茨城県リーグのジョイフル本田に所属。84年にドイツへ渡り、ブラウンシュバイクなど2部、3部のクラブでプレー。89年に帰国後は日本リーグ(JSL)2部のマツダ(現広島)に加入。Jリーグ開幕後も94年のファーストステージ優勝に貢献した。95年に再びドイツへ渡り、その年限りで現役引退。桐蔭横浜大、筑波大の監督を経て12年にJ1川崎の監督に就任。17年にJ2名古屋の監督に就任して1年でJ1復帰を果たす。23年11月に南葛SCの監督およびテクニカルダイレクターへ就任した。

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