【スポーツ】男子バレー・高橋藍がみせる進化「代表の軸になる」強い自覚が生まれた理由
パリ五輪で52年ぶりのメダルを狙うバレーボール男子日本代表で、イタリア1部リーグ・セリエAモンツァの高橋藍(22)が精神的な進化を証明する。イタリアリーグを終えて今月1日に帰国し、改めて「日本代表で軸になる」とリーダーになる決意を口にした。その自覚を導き出した出来事とは何か。リーグ準優勝で経験した成長と厳しさを武器に、メダル獲得をけん引する。
イタリアから帰国した高橋の表情には、リーグ準優勝の自信がみなぎっていた。「ファイナルで戦ったことは目標を超えた結果。大舞台を初めて経験し、戦い方や難しさを知って成長できた」。世界トップレベルで培った緊張感が、22歳を一回りも二回りも成長させていた。
改めて口にした目標が1972年ミュンヘン五輪の金以来、52年ぶりとなるメダル獲得とともに「代表で軸になること。チームを勝たせられる存在になっていかないといけない」という強い決意だった。
これまでのバレーボール人生で大きく心を揺さぶられたのは、21年の東京五輪。日本の29年ぶり8強に貢献したが、同時に自身に足りないものを実感した大会でもあった。準々決勝でブラジルに0-3で敗れて全日程を終えた時、新たな決意が芽生えた。「ブラジルに負けた時、自分自身まだまだ力がないとすごく感じた」。自身や代表チームに足りないものに気付かされたという。
「当時の自分はチーム最年少(19歳)で、引っ張ってもらう立場。石川(祐希)選手や西田(有志)選手ら軸の選手がいる中で、自分は軸になりきれていない。日本が勝つために必要なのは、軸になる選手がもう1人増えること。自分の成長のためにも、それを目標にしないといけない。東京五輪が終わった段階で、そういう目標が生まれた」と3年前の心境を振り返る。その自覚がイタリア参戦を即決させた。「自分がどの環境に行くことで成長できるのかと考えた」と同年11月、イタリアリーグのパドバと契約して海を渡った。
それから3シーズン。昨年秋のパリ五輪予選を兼ねたW杯で日本は2位になり、五輪出場権を勝ち取った。「昨年の五輪予選でも成長した姿を見せられた。チームを引っ張ることや自分自身のプレー、言葉の説得力。イタリアでの経験が代表の試合につながっている」と自分自身の変化を感じることができた。
いよいよ高橋ら日本代表の本番が始まる。「五輪で勝つために非常に重要」と位置づける今月末開幕の男子ネーションズリーグに、高橋は福岡大会(6月4~9日)から本格参戦予定。その道はパリへと続く。
「イタリアでのファイナルの経験が、代表でもそういう(大一番の)シチュエーションになった時に力を発揮する経験値として出せると思う」。技術だけでなく精神的にもけん引する立場として、新たな戦いに挑む。(デイリースポーツ・中野裕美子)