【野球】DeNA・筒香の野球人生支える打撃投手の存在 15年から変わらぬ絆と絶大な信頼

 米大リーグ・ジャイアンツをFAとなり5年ぶりに古巣DeNAに復帰した筒香嘉智外野手(32)を、献身的な職人が支えている。福本誠打撃投手(47)だ。筒香が渡米する前の2015年からフリー打撃でパートナーを務め、帰国後も2人の絆は不変だ。

 滞空時間の長い放物線を、5年ぶりに見届けた。福本氏は特別な感慨を抱いていた。日本球界復帰戦となった5月6日のヤクルト戦(横浜)で、筒香がいきなり放った決勝3ラン。自分のことのようにうれしかった。

 2019年オフの渡米直前。2人だけの約束を交わしていた。

 「僕が日本に戻ってきたとき、また投げてください」

 言葉には、筒香の感謝と敬意が込められていた。意気に感じた福本氏は、「また投げられるようにしておくね。帰ってくるまでバッピをやめないから」。こう宣言して海の向こうへ送り出した。

 筒香が福本氏を打撃投手に指名したのは、レギュラーを獲得した翌年の2015年。以降、一貫してパートナーシップを築いてきた。16年にリーグ本塁打王を獲得し、侍ジャパンの主砲としても活躍するなどトッププレーヤーに成長した筒香の軌跡は、福本氏との歩みと重なっている。

 筒香は同氏について「ボールに品があります。自分の調整がしやすいです」と絶大な信頼を口にする。要望に応じたコースへの正確無比な球筋。ストレスなく打撃練習に臨むには、双方のあうんの呼吸が欠かせない。

 11年から打撃投手を務める福本氏は、現役時代は内野手。抜群の制球力が買われて現職に就いた経歴の持ち主だ。21年の東京五輪では侍ジャパンの打撃投手として“招集”され、金メダル獲得に貢献するなど、長年の経験値から信頼する打者は多い。

 また、常に同じ人間が投げることは、自身のその日の状態やコンディションなど、変化に気付いてもらいやすいというメリットもある。微細な感覚の違いにも敏感な筒香は「福本さんに『どうですか』と聞くこともあります」。福本氏も「一流選手なので」と、いつでも質問されてもいいように「変化」を察し、神経を研ぎ澄ませている。

 5年前の約束どおり、コンビが復活した。渡米前から、リクエストは決まって「アウトコースを中心に投げてください」。左方向への打球の質が好不調のバロメーター。外角の球を逆方向に強く打つことで、日々の感覚を肌身で確認している。帰国後も変わらずそのルーティンをベースにする一方で、時にインコースへの要望も。福本氏は「これからここを攻められる、というのもあると思う」とアプローチの変化を感じ取っている。

 一流打者でありながら、裏方やスタッフへの気遣いを欠かさない筒香。背番号25を継承し、師と仰ぐ村田修一氏(現ロッテ打撃コーチ)が、スタッフに感謝の気持ちを持つ姿を常に見てきたのも大きいようだ。福本氏は「僕自身も育てられたという特別な思いがあります。筒香が現役を全うするまで投げ続けたい。そんな思いでいます」とその存在を励みとしている。

 打撃投手とは繊細な仕事。故障と隣り合わせで、選手同様に日々、ケアを欠かさない。裏方のプロフェッショナルは、筒香の最高のパフォーマンスをサポートするため、腕を振り続ける。(デイリースポーツ・福岡香奈)

 ◇福本 誠(ふくもと・まこと)1976年7月14日生まれ、47歳。東京都出身。現役時代は内野手。法政二から法大を経て98年度ドラフト4位で横浜(現DeNA)に入団。プロ通算55試合に出場し84打数21安打、打率.250。2006年に現役引退、球団職員となり11年から打撃投手。

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