【野球】なぜ?巨人ユニの背中に名前がない メジャーではヤンキース、レッドソックスの伝統球団が採用
開幕から2カ月が過ぎた中、セ・リーグ上位は混戦が続く。2年連続Bクラスと低迷した巨人はここまで3位。新生・阿部巨人の注目度が上がるにつれ、ファンの間ではユニホームの名前論争が再燃している。球団では、昨季から背番号のみを採用しているが、なぜか。背景には球団創設90年を迎えた「巨人軍」の誇りと伝統、そして時代を切り開く革新がある。
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節目の球団創設90周年を迎えた巨人は、4年ぶりのV奪回へ好スタートを切った。2年連続Bクラスの屈辱から、阪神、広島と激しい上位争いを続けている。特に32勝40敗と負けが先行した敵地で、今季は11勝12敗3分けと五分の戦いだ。そんな中、ファンの間で「強くなったように見える」と好評なのが、新調したビジターユニホームだ。
グレーをベースに色味から大幅に変更した。イニシャルロゴを刷新し、デザインは世界的ジュエリーブランドであるティファニーが担当。世界的に有名な「NY」のロゴは、77年に同社がデザインを手がけ、現在は米大リーグ・ヤンキースのロゴとしても知られる。巨人のキャップや、ヘルメットにも70年ぶりに「TG」ロゴが復活。革新的なユニホームは発表時から大きな話題を呼んだ。
注目度が上がったことで、ファンの間では、ユニホームの名前論争が再燃している。球団では22年11月、公式ユニホームサプライヤーとして、ナイキジャパンと契約を締結。デザインに大きな変更点がないホームユニホームとともに、背面にローマ字の選手名表記はなく、背番号のみのデザインを採用した。これは米大リーグのヤンキース、レッドソックスのホームユニホームと同様で、長くこの伝統が続く。
ナイキ社は現在、米MLB30球団のユニホームを手がけており、デザインは同社と球団で話し合われて完成する。球団創設以来、ユニホームに選手名を入れていないヤンキースには、「超一流選手でも球団の存在を超えることはない」という球団の哲学がある。歴史、伝統を重んじる巨人でも、この精神を形にした。
「勝つことが最大なる目標であり、巨人軍は個人軍であってはならない」。球団ではユニホームの制作に着手した一昨年、原辰徳前監督が18年の復帰会見で語った言葉を尊重。「FOR THE TEAM」の精神を常に意識して、チーム、フロント、ファン思いが一つになることを願い、背ネームを廃止すると決めたという。
当然、変化には賛否が付いて回る。選手、スタッフには「カッコいい」と好評だが、「分かりにくい」「選手の名前を覚えられない」といった否定派から、革新的なデザインや球団の理念に不要派の声も多い。球団創設90周年記念特別事業として、今月3日に「長嶋茂雄DAY」を開催。この日は「王貞治DAY」として、それぞれ選手全員が袖口に3番と、1番が入ったユニホームを着用した。両番号は永久欠番で、2人のレジェンドを象徴する数字。ユニホームは戦闘服で、勝負の世界には勝敗が存在する。残す結果だけが、大胆な改革を正解にも不正解にも変える。(デイリースポーツ・田中政行)